全力で迷走したから気づけた、ダンスとの向き合い方【事務・ダンス講師/AKO】


仕事もスポーツも自由に楽しむ女性を紹介するシリーズ、「はたらく私とスポーツ」。第2弾は、事務職をしながらオンラインでダンス講師をしているAKOさん。

ニューヨークの大学でダンス教育学を学び修士号まで取得して帰国、今は金融会社で事務をしながら副業でオンラインのダンスレッスンを開講しています。

「ダンスとの向き合い方を、何度も迷い考えた」と語るAKOさんがどのような決断を行なってきたか、夢との向き合い方について伺いました。


(撮影:B&編集部、聞き手:小田菜南子、文:横畠花歩)

 

“今しかない”で決めた単身留学

初めて習ったダンスは、小学生のころのフラダンスでした。音楽に合わせて体を動かす楽しさを感じたものの、伝統芸能として型が決まっていたことへの窮屈さも感じていましたね。高校ではダンス部に入ったものの、自分でつくりあげるオリジナルの感覚を求めて、有志で「ダンス同好会」を結成。仲間と自由に踊る毎日を過ごしていました。


海外への憧れはあり、留学を勧められたこともありました。でも当時は同好会の活動に夢中すぎてそこを離れるという考えが持てなかったんです。でもいつかショービジネスの本場アメリカでダンス・エンターテイメントを学びたいという思いが強く、NYの大学へ進学しました。選んだのは、ダンスを極めるための専門学校ではなく、ダンス教育学のある一般の大学でした。付いて行くのに必死で、人生で一番勉強をした時期でしたね。

アメリカではダンスの「芸術性」が評価され、美術やアートと同じように体系化された「ダンス学」という専門の学部がありました。人によってさまざまなダンスとの付き合い方があると思いますが、私は「ダンス=表現のツール」として捉えています。教育実習では“自分の好きなものに出会う瞬間”やオリジナルを生み出す楽しさを生徒たちと共有できたことで、教えることに喜びを覚え、大学院卒業後もアメリカに残ることに決めました。

 


(ご本人提供)

 

ちゃんとしなきゃ。立ち止まった時間


ニューヨーク大学院でダンス教育学修士号を取得したあと、現地の小学校やダンススクールでダンスを教える仕事をしていました。ダンスを教えるだけでは食べていけなかったので、レストランでの掛け持ちのアルバイトもしました。1年が過ぎたタイミングで、VISAの更新を迫られて“自分が置かれている現状と向き合う瞬間”が訪れました。

 

(ご本人提供)


日本にいる友達は就職をして安定した生活を送っている中、アメリカに単身で渡って7年が過ぎた私の収入は安定しないまま。この状態でVISAを更新して、向こう4、5年をアメリカで過ごしてよいのかという迷いが生まれたんです。長年の海外生活に、飽きてしまったところもあったと思います。


いろいろ考えても、外国で“ダンスで食べていく”という未来が見えず、日本に帰ることにしました。周囲と比べて自分は「ちゃんとしていない」気がして、焦ってもいたのかもしれません。日本でもダンスを学べる場所はあると思い、大学を探してみたものの、そこにも次の場所は見つかりませんでした。なぜ私はダンスが好きなのかすらわからなくなって・・・。ここからは迷走期へ突入(笑)


そこでまずしたことは、そもそもの帰国のきっかけとなった「焦り」から自分を解放すること。週6日フルタイムで英語講師として働き始めました。自分の武器である英語を使って、まずは生活を安定させたかったんです。英語を教える仕事は好きでしたが、さすがにダンスをする時間がなさすぎたので、また路線変更。時間に融通が効き語学力が活かせることを軸に転職を検討して今の事務職へと落ち着きました。

 

迷走は、夢と向き合うための準備期間

(ご本人提供)


あの「迷走期」を振り返ると、結局私には、将来のダンス界を考えたビジョンがなかったんです。ビジョンのある人じゃないと、何も生み出すことなんかできません。「ダンスで大学院にまで行きながら、ダンスで食べていかないなんて」と考えたこともありましたが、あのまま固執しなくてよかったと今なら言えます。


今働いている金融会社では副業が認められているので、空いた時間を利用して、アルゼンチン人やアメリカ人にオンラインのダンスレッスンを開催しています。時間にも気持ちにも余裕の生まれた今、これからの夢も見つけることができました。


それは、「日本人に英語でダンスレッスンを提供すること」「ダンスを使った国際交流の仕組みをつくること」。アメリカで学んだダンス教育の知識を、日本で生かすために何ができるか。たどり着いたこの2つの目標は、今の私だからこそできることです。そんな目標に出会えて、今は未来が楽しみになっています。


“収入面はさておきダンスだけに熱中”したアメリカ時代、“安定した生活を送りながらダンスと向き合う”今。両方を知った状態でもう一度過去に戻ったとしたら、きっと今と同じ道を選んでいるはずです。あの迷走期があったからこそ、ダンスとの生き方に柔軟になれました。そして、今の充実した生活と、これからの夢を支えてくれているのは、間違いなくダンスに熱中した時期のおかげです。だから、今打ち込みたいものがある人は、元を取ろうとか、食べていけるかとか考えずに全力で向き合ってみてほしいです。

 

■次の目標

・日本人に英語でダンスレッスンを実施

・ダンスを使った国際交流のプログラムを実現する

 

 

■プロフィール

AKO(あこ)さん

神奈川県出身。高校卒業後単身で渡米。現地の大学を卒業後、ニューヨーク大学(NYU)大学院にて、ダンス教育学修士号を取得。1年間のアメリカ生活後に帰国。英会話を指導する塾での講師、プリスクール・学童にて英語/ダンス講師の経験を経て、金融会社に転職。現在は事務職をしながら、副業でアメリカ・アルゼンチン、日本人へオンラインのダンスレッスンを行なっている。

AKOさんのダンスレッスンは以下から申し込めます。

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