睡眠不足だと脂肪が減りにくい?!〜年末年始の睡眠編〜

こんにちは。ヒラノマリです。

『スポーツ×睡眠』をテーマにした連載6回目は、睡眠と代謝の関係を紐解きながら、睡眠コンサルをしている中で年末年始に多いお悩みをQ&A方式でご紹介していきます。

 

睡眠の質が下がると、脂肪より筋肉が減りやすい

みなさんは徹夜明けにやけ食いをしてしまった、ダイエットをしているのに食欲を我慢できない!なんて経験ありませんか?

実は徹夜などで睡眠不足になると、正しい判断や衝動のコントロールを司っている脳の前頭前皮質の活動が鈍ってしまい、コントロールが効きにくくなって、食べ物を選択する際も高カロリーの食事を好む傾向があることが報告されています。

また睡眠は、食欲以外の脂肪の代謝や筋肉の合成にも影響を与えているのです。

 

3時間の睡眠時間が代謝の質を変える

学術雑誌『Annals of Internal Medicine』では、睡眠時間が5時間半のグループと8時間半のグループに分け、摂取カロリーを毎日、朝食・昼食・夕食・夜食に分けて約1460キロカロリーと厳重に管理し、座っていることが多い生活を送った環境下での体脂肪の変化を調査した研究結果が発表されています。

この実験の結果、摂取カロリーと運動量が同じ条件下で2つのグループの体重は同じように減っていたものの、睡眠時間が8時間半のグループは、落ちた体重の50%が体脂肪だったのに対し、5時間半のグループは落ちた体重の70%が筋肉だったという結果に!

睡眠時間の違いで、体脂肪が減るのか、筋肉が減るのか、大きな違いがでてしまったのです。(※1)

この結果から、同じ減量プログラムでも睡眠時間が5時間半のグループは体脂肪ではなく、体内のグリコーゲンが減ってしまい、筋肉が分解されてしまったと考えることができ、睡眠不足によってグリコーゲンや脂肪のエネルギー代謝が変化したことがわかります。

また、別の実験では睡眠不足でインスリンの機能が低下することによって、筋グリコーゲンが低下してしまったという報告もあり、睡眠と代謝は切っても切り離せない関係と言うことができます。(※2)

 

入眠開始90分の質がからだづくりに影響

このように、代謝を考える上で睡眠時間については十分に気を付けなければなりませんが、同時に睡眠の質も非常に大切な要素になってきます。

たんぱく質を合成して筋肉をつけたり、脂質の代謝を促して体脂肪の蓄積を抑えたり、体脂肪を燃焼させる働きがある『成長ホルモン』は、寝入ってからの最初の90分間に一晩で出る70~80%が分泌されます。(※3)

そのため、睡眠時間のみならず寝入りばなの最初の90分の睡眠の質を高めることも意識しなければなりません。

 

オフ期に睡眠の質を下げないための3つのポイント

お酒は寝る3時間前までに飲み終える


お悩み①:睡眠に響かないお酒の飲み方とは?

 

年末年始はお酒を飲む機会も増えますよね。

たしかに、アルコールは摂取すると眠くなり、寝つきは良くなりますが、アルコールが徐々に代謝され、3時間ほど経つと血中のアルコール濃度が低下し、この血中のアルコール濃度が薄くなったときに興奮して目が覚め(中途覚醒)、浅いレム睡眠が増加します。

多少寝つきはよくなったとしても、実際はノンレム睡眠とレム睡眠のリズムが乱れることによって、睡眠の質が低下しているのです。

また、アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドは、日中優位になっているはずの交感神経を刺激してしまうので、どうしてもお酒を飲む場合には、お酒は就寝3時間前に飲み終えているようにしましょう。

 

また、お酒を飲む際は、水分を摂ることはもちろんのこと、アルコールの代謝をスムーズに進めるためにたんぱく質、アルコールの吸収を穏やかにするナッツなどの脂質が含まれるメニューを選ぶこともポイントです。

どんなにお酒が強い選手でも、飲酒後に睡眠を計測できるスリープテックデバイスを着けて就寝してもらい睡眠データを分析すると、通常より睡眠リズムが乱れており、報告がなくても『お酒を飲んだな』ということがわかるほどです。

就寝中の回復力も普段より落ちていることが目に見えてわかるので、どうしてもお酒をやめれない、減らせないという方は睡眠をチェックできるデバイスなどを使用して『お酒の悪影響を見える化する』ということも大切かもしれません。

 

運動量が減っても睡眠時間は減らさない


お悩み②:運動量が減るオフシーズンの睡眠時間は短くしていいの?

 

オフシーズンは運動量も減り、睡眠時間をシーズン中より減らしてもよいのかという質問もよく受けますが、答えはノーです!

というのも運動量は減ったとしても、オフシーズンはオフシーズンで何かしらの目標や目的をもって皆さん過ごされているはずです。

例えば、プロ野球選手が新しい球種を習得するためにオフ期間をその練習に費やしたとします。

その場合、新しい球種を投げるための技術を習得し、身体に覚えこませる必要があるわけですが、新しい運動技術を習得する際にも睡眠が大きくかかわってきます。

 

睡眠のリズムの中でも、朝方に出現する浅いノンレム睡眠が運動技能の記憶を定着させる役割があり、日中の練習やトレーニングを定着させ、運動技能のパフォーマンスの向上に関連しているという研究結果が報告されており(※4)、睡眠時間を削ってしまうとこの朝方の浅い睡眠が出現せずに起床することになってしまいます。

つまり、十分な睡眠時間が確保できていないと新しい技能を効率よく取得できないということになります。

 

睡眠は運動機能以外にも脳機能やホルモン分泌など、さまざまな身体機能に関わっています。アスリートなら最低でも8時間の睡眠時間を確保することが、充実したオフを過ごす第一歩になります。

 

午前中に日を浴びて体内時計を整える


お悩み③:オフ(年末年始)になると朝スッキリ起きられません。なにかいい対策はありますか?

 

冬は日照時間が減って日を浴びる時間が減り、覚醒を促進したり、感情をコントロールする役割のあるセロトニン(通称・幸せホルモン)の分泌が減少してしまうことで、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌も変化し、体内時計が狂いやすくなって朝の目覚めが悪くなりがちです。ゲームや映画鑑賞が趣味のインドア派の選手からこういった質問が多いのも特徴です。

練習のないオフ期間は、意識して脳の中にある体内時計の親時計を動かすことが寝起きを良くするポイントになります。

『朝起きてからの行動が夜の睡眠、翌朝の寝起きを決める』と肝に銘じましょう。

とくに今年は外出も減り、例年以上に日を浴びる機会が減ることが予想されるので、『朝ベランダに出て歯磨きをする』、『毎日朝起きてからのストレッチを窓際でする』、『朝食を窓際で食べる』など、日常生活の習慣と紐づけて、午前中に日を浴びるのがおすすめです。

また、寝起きの良さだけでなく、日を浴びて体内時計を整えることが睡眠中の成長ホルモンの分泌を安定させ、筋肉の合成や脂肪の代謝を促すことにも繋がります。寝だめやお昼寝のしすぎにも注意しましょう。

 

 

◼︎プロフィール

ヒラノマリさん

ヒラノマリ

スリープトレーナー。自身も睡眠で悩んだ経験から睡眠学に興味を持つように。大学卒業後、某大手インテリア会社に入社。寝具担当として幅広い顧客に寝室全体のコンサルティングを行ってきた。2017年から、アスリート専門に睡眠指導を行う『スリープトレーナー』として活動をはじめる。ショールームでの販売経験を活かした具体的なアドバイスは、プロサッカー選手や五輪出場選手にも好評を得ている。

Twitter:@sleeptrainer_m3
Instagram:@maririn__gram

 

≪参考論文≫

※1:Insufficient Sleep Undermines Dietary Efforts to Reduce Adiposity
Arlet V. Nedeltcheva, MD; Jennifer M. Kilkus, MS; Jacqueline Imperial, RN; Dale A. Schoeller, PhD; and Plamen D. Penev, MD, PhD
5 October 2010  Volume 153 Issue 7  Pages 435-441

 

※2:Skein M, et al. Intermittent-sprint performance and muscle glycogen after 30 h of sleep deprivation. Med Sci Sports Exerc. 2011 Jul;43(7):1301-11.

 

※3:Van Cauter, E. and E. Tasali, Endocrine physiology in relation to sleep and sleep disturbances. Second ed. Principles and Practices of Sleep Medicine, ed. M.H. Kryger, T. Roth, and W.C. Dement. 2011,Missouri: Elsevier Saunders. 291-322.

 

※4:Practice with Sleep Makes Perfect: Sleep-Dependent Motor Skill Learning.Neuron,3 July 2002

 

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