セーリングの魅力とは?日本代表・後藤凛子

写真:本人提供【左から市橋愛生(いちはし・まなせ)さんと後藤凛子さん】

初めまして、オリンピックセーラーを目指し活動している後藤凛子(ごとうりんこ)です!

みなさんは「セーリング競技」についてどのくらいご存じですか?
セーリング競技とは簡潔に言えば、風の力だけで船を操作し、レースで順位を競うスポーツです。種目は使用する艇種(ヨット)によって分けられ、その数は正確には数えきれません。

その中でも「国際クラス」という120種類の船は、クラスごとに定められた国際ルールを用いて公式大会が行われます。クラスごとに船の規格やスピードが大きく異なり、どのクラスにも種目特有の魅力があります。今回は私の経験をもとに、みなさんに知られざるセーリング競技の魅力をお伝えしていきます!

セーリングの魅力

セーリング競技の魅力は大きく分けて二つあります。
一つ目は年齢・性別を問わず多くの人が楽しめることです。冒頭にも述べた通り、セーリング競技にはさまざまな種目があります。例えば、初心者の子供でも乗れる小さい船から、ベテランでも苦戦するような操船の難しい船まで、さまざまです。中には、障害があっても乗りこなせるようにデザインされた船もあり、健常者と一緒にレースを楽しんでいます。種目ごとにターゲット年層や難易度・特徴が異なるため、艇種を変えることで、生涯を通して楽しめるスポーツだとも言われています。

二つ目は誰もが勝つチャンスを持っていることです。セーリング競技は自然要素(風・波・潮・天候)を読み取り、いかに自分の戦略に適応させるかが勝利の鍵となります。しかし、自然は常に変化するため、何が起こるかわかりません。つまり、最後まで誰が勝つかわからない、誰にでも勝つチャンスがあるということです。これこそ、セーリングの一番難しいところであり、魅力であると思います。

セーリングを始めたきっかけ

私が生まれ育った葉山という町は、ヨット発祥の地とされ、マリンスポーツが盛んな地域です。両親がセーラーだったこともあり、セーリングが非常に身近な環境で育ちました。小学校3年の時に、地元のヨットクラブの募集があり、友達と応募したのがセーリングを始めたきっかけです。

軽い気持ちで始めたセーリングでしたが、次第に魅力に惹かれていきました。高校時代にはスキフ種目という二人乗りのハイスピードボートに乗るようになり、競技としての魅力にもとりつかれました。今では世界の頂点を取るために、オリンピック出場を目指して活動しています。

オリンピック種目・49erFX級について

セーリング競技のオリンピッククラスにはどんな船があるのか見ていきましょう。来年のパリオリンピックで実施される種目は以下の通り、全部で10種類あります。

IQフォイル級男女・フォーミュラカイト級男女は、2年前の東京五輪から新たに加わった種目です。これら10種目のうち、私が専攻しているのは49erFX(フォーティーナイナー エフエックス)級です。

49erFX級とは女子種目であり、男子種目の49er級と同じ部類に分けられます。これらをスキフ種目といい、通称「海のF1」とも呼ばれます。その名の通り、ハイスピード・ハイパフォーマンスで、見た目も非常に迫力のある船です。従来の船のようなタクティクス(戦術)を重視する艇種と比べ、スピードを作り出す力が求められる最新型の船でもあります。その迫力は言葉では表現できませんので、ぜひ下の動画をご覧ください!

アジア選手権ハイライト①

アジア選手権ハイライト②

いかがだったでしょうか?みなさんの想像するヨットよりも迫力のあるものだったのではないでしょうか?この船は最速で時速40kmものスピードが出ます。体感スピードは、車の時速40kmとは比べ物になりません。このようなハイパフォーマンスボートは、スピードを引き出すために、ペアとのコンビネーションと体格づくりが非常に重要になります。

日本人の体格は欧米人と比べ不利と言われており、ほとんどの日本人選手は増量が必要です。また、まだ国内での普及が行き届いておらず、現在国内で活動しているのは5チームにも満たないのが現状です。

マイナー競技を続ける上での課題

国内における認知度を高め、競技人口を増やすことです。

東京五輪種目の認知度ランキングの結果では、セーリング競技は下から2番目という結果でした。多くの人がセーリング競技が何を競うものなのか、どんな船があるのかを知りません。島国で海に恵まれているにも関わらず、多くの人がセーリング競技に触れ合うことも知ることもないのが現状です。セーリング競技の普及に向けて、競技の第一線で活動する我々の役割は大きいと感じています。

今後の目標

目標はロサンゼルスオリンピックでの49erFX級金メダル獲得です。

この目標を達成することは、日本のセーリングの更なる発展にもつながるでしょう。その第一人者になるためにも、引き続き競技に励んでいきます。

セーリング競技に少しでも関心を持っていただけたでしょうか?これから夏に向けて暖かくなり、セーリングに適した季節になります。ヨットハーバーやヨットクラブによる体験会・試乗会も増えていくことでしょう。ぜひ、この夏にセーリングを体験してみてください!

写真:本人提供

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