どんなきっかけでもいいから僕を知ってもらう。水球荒井陸選手がnoteを始めてわかったこと

水深3m以上の足がつかないプールの中でハンドボールをする……?そんな過酷な競技が、水球。「水中の格闘技」と呼ばれる激しさをもつ、水泳競技の中で唯一の球技種目ですが、地上波での放送が少なく日本ではまだマイナーな競技です。

水球の日本代表『ポセイドンジャパン』の一員の荒井陸(あらい あつし)選手は、2020年の6月からnoteでの発信を開始。身長168cmと小柄な体格をあえて「小さな巨人」と言い換え、不動産会社での社会人経験から大好きなアイドルももクロの話題まで、幅広く記事を書いています。あえて水球以外のネタを書くという荒井選手が考える、マイナー競技の普及のために必要なことを伺いました。

(撮影:chiai/聞き手・文:B&編集部)

 

オリンピック直後より知名度アップ。水球以外のネタで共通の話題を

B&編集部
SNSを活発に始めてから反響を感じていますか?
荒井選手
以前に比べたら全然違います。「SNSを見てきました」と、試合を見にきてくれる人もいて、嬉しいです。特に今年6月からはnoteを始めたのですが、水球を知らない人からも声をかけてもらうことが増えました。オリンピックの直後より、今のほうが多くの人に知ってもらえるようになった気がします。
すごい効果!noteを書くときに意識していることはありますか?
水球のことばかりを書いても、水球を知らない人は読んでくれないと思うので、全く関係ないことも意識的に書いています。
水球荒井陸選手

この日は茅ヶ崎のビーチで撮影

そういえば、荒井選手はアイドル好きだとも。
はい、ももクロさんの大ファンです。こういうことを書いたら女性のファンが離れてしまうのではないかと思ったのですが、老若男女から人気のあるももクロが、ファンの方との共通の話題になることもあるのでは、と思っています。
知ってもらうきっかけづくりですね。
そうですね。なんであれ、まずは僕を知ってもらってから、水球を知ってもらうという順番です。

 

知名度が競技力につながる時代。自分の見せ方を考える

B&編集部
そもそもどうして発信の重要性を意識するようになったのでしょうか。
荒井選手
サッカーの本田圭佑選手が、「有名なサッカー選手は何をしなくても注目してもらえるけど、マイナー選手は一生懸命発信してもなかなか気づいてもらえてない」ということを発言していたんですよね。それを聞いてから、いろんな選手のSNSなどを見てみるようにしたんです。

厳しい現実ですが、それをどのように受け止めたのでしょうか?
逆に、どうしたら見てもらえるんだろうと考えました。水球は、裸のからだが出るという特徴があるので、それを生かしたらどうかなとか。試してみたら、やっぱり反響があって。今回の撮影も、結構きわどいカットも多いのですが、楽しみにしてほしいです!

自身の魅力を最大限伝えるために、スタジオを借りて撮影会。現役選手の覚悟を感じます

振り切ってますね!
見せ方って大事なんじゃないかなと。スポーツ選手はスポーツだけ真面目にやっていればいいと言う人もいますけど、それだけじゃ競技環境はよくならない。

よく女性アスリートがお化粧をすると批判されると聞きますけど、僕は見た目をよくすることってすごく大切だと思っています。人気を高めて、競技を見る人を増やすことが、回り回って競技力向上にもつながると思うんです。

水球荒井選手|B&

鍛え上げたからだを惜しげもなく披露

それはリオデジャネイロオリンピックのときにも感じましたか?

リオ前後で、環境が全く変わりましたね。メディアに取り上げていただくだけでなく、施設利用もしやすくなりましたし、海外チームからのオファーもいただき、ハンガリーにいくこともできました。
その当時の盛り上がりを維持できていますか?
う〜ん。なかなか難しいですよね……。でも、まずは選手自身が発信し続けることが大事だと思っています。今はSNSもあるので、メディアに取り上げられてもらうのを待つのではなく、自分の考えで発信することで、新しい盛り上がりも生み出せるはずです。

 

代表を外れても、発信は続ける 

B&編集部
逆に、マイナー競技ならではの強みを感じるのはどのようなときですか?
荒井選手
ジュニア世代の選手に直接指導できる機会が多いのは、マイナー競技ならではだと思います。サッカーだったら、日本代表クラスの選手が10代の選手に教えにいくことなんて、まずないですよね。「荒井くんの話は、みんなよく聞いてくれるんだよ」と、現場の指導者の方からも言っていただくことも多いです。
荒井選手は海外経験もありますし、そんな選手から直接指導を受けられるのは嬉しいですね。
僕自身、水球に育ててもらったという恩があるので、引退後もジュニア世代の育成には関わっていきたいですね。社会人をやめた理由も、引退後も水球に関わりたいと思ったから。今頑張っているSNSなどでの発信も、続けていきます。仮にもし僕が代表を外れたとしても、水球を盛り上げたいという気持ちは変わらないですから。

最後に、水球の見どころを教えてください。
水球は男前が多いんですよ(笑)。最初はそういうきっかけでもいいんです。からだがいい選手同士が、裸でぶつかりあう迫力も、他の競技にはない魅力だと思います。

 

■プロフィール

荒井 陸(あらい あつし)

水球選手。1994年生まれ。小学校低学年の頃から水球を始める。168cmと小柄ながらも、俊敏な動きを生かして日本代表選手としても活躍。2016年のリオデジャネイロオリンピックにも出場し、大会後ハンガリーのチームで2017年まで所属した。私生活から競技のことまで自分の言葉で綴るnoteが反響を呼び、人気が高まっている。

note:https://note.com/a2desu

2020年10月29日から始まる日本選手権にも出場予定。大会は日本水泳連盟の公式Youtubeから配信される。

日本水泳連盟公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UClLyhI4E7BF3MmPREE9wMEg

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