巨人・島野愛友利の現在地「日本一だけではない…女子野球界のために」

読売ジャイアンツ女子チーム(硬式野球クラブチーム)に所属する島野愛友利(しまの・あゆり)選手。中学生で所属していた名門・大淀ボーイズでは、「第12回全日本中学野球選手権大会―ジャイアンツカップ」にエース番号「1」を背負い出場。見事優勝し女性初の胴上げ投手になりました。神戸弘陵学園高校に進学し、2021年8月に阪神甲子園球場で行われた「第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会」の決勝戦でも優勝しています。

高校卒業後、2022年に巨人(女子チーム)に1期生として入団。野球を続けてきた理由から、女子野球を広めたい思いを伺いました。

「ジャイアンツに縁を感じた」野球を続ける理由

ー野球を始めたきっかけを教えてください。

元々2人の兄が野球をしていて、自分も見に行くうちに野球をやりたいなと思うようになりました。

ー野球ではなくソフトボールを選べば、オリンピックなどの道も視野に入ったと思います。ソフトボールへの転向を考えたことはありますか?

中学の時は悩みました。はじめはソフトボールの存在をあまり知りませんでしたが、オリンピックには出場してみたかったので…。でもソフトボールだとピッチャーは下投げになります。そこで大きな差を感じて、野球を選びました。

ー高校卒業後も野球を続ける道を選んだのはなぜですか?

まだまだマイナーですが、現在女子チームのあるプロ野球球団は巨人を含め3チームあります。自分もその一員として女子野球の発展に貢献したいと思い、野球を続けることにしました。

ー巨人への入団を決めた理由を教えてください。

中学生の時にジャイアンツカップという全国大会で優勝したり、高校3年生の時に巨人戦の始球式に呼んでもらったりと、ジャイアンツとの縁を感じていました。他の女子チームからもお誘いいただきましたが、巨人に対してご縁や魅力を感じ、最終的に入団を決めました。

ー1期生としての入団、かつ2021年(高校3年次)には女子プロ野球リーグの解散もありました。不安に感じることはありませんでしたか?

元々プロを目指して野球をしていたわけではなかったので、不安はほとんどありませんでした。将来について考えていた時期に、女子チームを立ち上げる球団が増えていったので、期待の気持ちの方が大きかったです。

ーアマチュア野球ならではの苦労はありますか?

もちろん野球だけでお金をいただいて生活できることに越したことはありません。でもアマチュアであることを苦労と捉えるのではなく、野球をしながらもうひとつのキャリアについて考えることができるとプラスに捉えています。

例えば今だと、午前中に選手として練習し、午後はスクールコーチをすることでお金をいただいています。もし最初からプロ選手として活動することになっていたら、将来のことも考えず、今の環境に満足してしまっていたかもしれません。

「野球=男子」を覆す瞬間を目指して

ー女子野球が広まっているなと実感することはありますか?

先日東京ドームにて阪神タイガースの女子チームとの交流試合が開催されました。イベントの開催などを通じて、「巨人」という球団の力を借りながら女子野球が徐々に発展しているなと感じています。

ネガティブな意味ではなく、性別が違う以上、男女での違いができることは当たり前。その違いを魅力として捉え広めていければと思いますね。

ー女子野球人口を増やしていくために、今後やっていきたいことはありますか?

たくさん視点はあるとは思いますが、将来を考えたときに育成年代の野球人口を増やすことが大切かなと。一方で今の世代の技術アップももちろん大事なので、両軸で進めていくことが、10年、20年後を考えたときに大切になってくると思います。

また、子どもが野球をやりたいと思っていても、保護者の方々の理解がないと続けられません。野球に取り組める環境を充実させられれば、女子野球界の底上げになるのではと思います。

ーこの数年間を通して、女子野球界で感じている変化はありますか?

今は男子と同じグラウンドの広さや条件でやっていますが、先日行われた東京ドームでの試合では、柵を設置して球場のサイズを狭くすることで、ホームランまでの距離を短くする試みをしました。

参考にできるのはメジャーリーグ。毎年、状況に応じてさまざまなルール変更がなされています。変化しながら状況に合わせて対応していくことが、必要だと思います。

ーあらためて今後のチーム、個人としての目標を教えてください。

高校までは全国制覇を目標にしていました。でも今は日本一だけにこだわっているわけではありません。どちらかというとジャイアンツに所属している影響力を生かして、女子野球界にとって良い影響を与えられるチームにしたいですし、次の世代に憧れられる選手になりたいです。そのために選手である限り自分の実力を上げて、野球に真摯に取り組んでいきたいと思っています。

女子野球が将来今の男子のプロ野球のように発展すれば、野球=男子というイメージが覆るかもしれません。そうなった時の社会への影響は大きいと思うので、自分にできることを地道に頑張っていきたいです。

RELATED

PICK UP

NEW