「スポーツ経験は生きない」と言われた水原恵理アナが、“らしさ”を掴むまで

大学ラグビーの監督を父にもつ、スポーツ一家で育ったアナウンサー水原恵理さん。幼いころの遊び道具はラグビーボールだったという彼女は、まさに「ラグビーの英才教育」を受けて育ちました。

グラウンドホッケーに打ち込んだ高校時代にはインターハイ、大学時代にはインカレに出場。スポーツに真摯に向き合ってきた彼女が選んだ道は、「正確にものを伝えるプロ」であるアナウンサーでした。スポーツ好きを公言する水原さんは、そのキャリアをどのように生かしてきたのでしょうか?

多くの有名アスリートのプロデュースを手がけてきた、しげるちゃんの対談シリーズ第7弾です。

しげるちゃんと水原恵理さんの写真

(聞き手:しげるちゃん/文:横畠花歩/撮影:テレビ東京)

しげるちゃんと水原恵理さんの写真

しげるちゃんとラグビー観戦をしたことも(提供:水原恵理さん)

右:水原 恵理(みずはら えり)

アナウンサー。1999年テレビ東京に入社後、政治経済・スポーツ・朝番組など幅広い番組を担当。現在は「ゆうがたサテライト(テレビ東京)」・「日経プラス10サタデーニュースの疑問(BSテレ東)」、「ゴルフ交遊抄(同)」他多数の番組を担当している。

中央:しげるちゃん

商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。元男子サッカー日本代表・長谷部誠選手の著書『心を整える。』のプロデュースも手がけた。

 

牛乳でボールを磨いた日々、ラグビーの英才教育を受けた幼少期

しげるちゃん
おひさしぶり。テレビではご活躍を拝見してますよ~。最後に会ったのって、いつだったっけ?
水原さん
しげるちゃん、お久しぶりです!お元気そうで嬉しいです。

スポーツ好きなのは昔から認識してるけど、水原さんの学生時代はどんなふうにスポーツと関わってきたの?
高校時代はグランドホッケーに打ち込み、大学でラグビーに転向しました。ラグビーは社会人になっても継続して競技に取り組んでいましたね。
あっ、女子ラグビーはアナウンサーになっても続けていたんだね。ラグビーはからだのあたりが強い印象があるので意外だなぁ。始めたきっかけは、お父様の影響だったよね?
父が成城大学ラグビー部の監督をしていて、「ラグビーの英才教育」を受けて育ちました。小学生のころの兄と私の遊び道具と言えば、楕円形の皮製品であるラグビーボールだったんです。牛乳でボールをピカピカに磨くというのが毎日の習慣でした。ラグビー一色の我が家には、横縞の服はOK、縦縞の服はNGという独特のルールもあったんですよ。
水原恵理さんの写真

関東大会出場時のお写真(提供:水原恵理さん)

その服のルール笑えるね(笑)。ということは、幼少期からラグビー一家だったんだ!大学時代まで続けていたグランドホッケーから、女子ラグビーへ再び転向したのはなぜ?
屈む体制を続けるグランドホッケーで腰を痛めて、リハビリも兼ねてはじめたんです。ラグビーなら腰への負担が少ないかなと思って……(笑)。
ねえねえ、リハビリにラグビーをするって、どういうこと!?(笑)。本当にスポーツをするのが好きだったんだね。
なにかの日本代表選手になりたかったんですよ。バレーボールは身長が伸びなかったから諦めましたが、高校時代に打ち込んだグランドホッケーは、競技人口が少ないから代表を狙えるのではないかという目論みがあって、インターハイにも出場しました。
サラッと、すごいこと言ってる!(笑)

 

“スポーツ経験は生きない”と言われて。駆け出し女子アナの学び

水原恵理さんの写真

世田谷レディースでのチームメイトとラグビー観戦に(提供:水原恵理さん)

しげるちゃん
スポーツが大好きだった水原さんが、アナウンサーを目指したきっかけは何?ほら、もっとダイレクトにスポーツと関わる仕事だって、他にもあったと思うんだけど。
水原さん
大学でマスコミ学を専攻していたので、アナウンサーという職種を身近に感じていたことと、ラグビー部の友人に背中を押されたことがきっかけでドアを叩きました。
今までは団体競技を経験してきたと思うけど、取材現場に生かされていることってあるのかしら?
私が入社した年に、JリーグのFC東京がJ1に昇格したことをお伝えする機会があったんです。そのときに、アナウンサー人生の師匠の「ドーハの悲劇」を実況した久保田光彦さんに、「自分のスポーツの経験が喋りに生きることはない。自分の経験なんて、プロの世界と比べたら話にならない」と言われて、衝撃を受けました。
自分の武器だと思っていた「経験」だったろうから、それは衝撃な言葉だね!そこを乗り越えて、自分がスポーツを「する側」から「伝える側」になって感じた心境の変化はある?
他局の同期にもスポーツニュースを担当していた人がいたのですが、スポーツをやっていたという自負から「違いを出さねば!」と躍起になってました。いまや新人の子にも必ず伝えるのですが、“スポーツの本質を伝えること”が最も大切だと感じています。

競技の本質を伝えたいと思っていて、解説者を捕まえて意見を求めたり、試合前の練習風景の中に意味を探そうと一生懸命でした。1cm単位のプレーにフォーカスして、女性が追いかけない部分を追いかける意識をしていました。

水原恵理さんの写真

なるほど。そこの部分ではスポーツをしていた経験が、結果的には生かされているように思えるね。
私の場合、“選手”ではなく“競技”を切り口に取材を重ねられたことは、自分が真剣にスポーツと向き合ってきたベースがあるからできたのかなと感じています。
水原さんはスポーツキャスターだけじゃなくて、報道番組や皇室番組にも出演しているけど、本来はバラエティー色があるのに不思議だなって思った(笑)。報道番組では逆に、自分らしさをどうやって出したりするの?
私は生粋のスポーツ人間なので、番組内で例え話をするときに飛び出すのはスポーツネタなんです。スポーツに真剣に向き合ってきたからこそ、自信を持って報道番組を担当できているように思います。
水原恵理さんの作成したフリップの写真

番組内のフリップに、自身が描いたイラストを使用する工夫も

私がサブキャスターを務める毎週土曜生放送の『サタデーニュース』は、1週間を振り返りながら政治・経済、スポーツに至るまで、ニュースのポイントを深く追求する番組です。番組内で登場する“スポーツネタ”は、私が一人で用意するんですけど、生放送本番までスタッフや共演者にすら内緒なんです(笑)。
イラストも自分で描いているの?
もちろんイラストも自分で描きます。こちらは、アメリカの民主党の候補者争いにおける戦略に、「ID野球の申し子」の野村克也監督や、ラグビー・大西鐡之祐監督の強さの秘密を喩えたときに使用したフリップです。
なるほど、時事ネタとうまいこと繋げるんだね。それが水原らしさだね。

 

スポーツ脳を仕事に生かす。水原恵理アナのニュースの読み方

アナウンサーとしてのキャリアの中で重要なのって、正確に伝える力の積み重ねだと思うのだけど、正確に伝えることに関してどんな姿勢で取り組んでいるのかしら?
事前準備を徹底しています。これはスポーツにも共通する勝つための準備と同じですね。遠慮なく周囲にアドバイスを求め、事前の下調べの知識が間違っていないかの確認を欠かさずにしています。テレビ番組も団体競技と同じで、チームで作り上げているという感覚です。
水原さんと話していると、伝えることへの誠実さを感じるのは、スポーツマインドかしら。水原さんがスポーツ選手へ取材をする時に守ってきた、自分なりのルールみたいなのがあれば教えてほしいな。
「私が知らないこと、視聴者が知らないこと、あなたのスキル・立場じゃないと見えないことを教えてください」という姿勢で、選手一人ひとりの声を聞いてきました。番組を作り上げる中で、違うと思ったことに対しても勇気を持って発言しています。

テレビ番組を観ていて、メジャースポーツとマイナースポーツの取り上げのボリュームの差を感じることがあるんだけど、これはどうしてですか?
注目度の高い競技が取り上げられやすい番組は、視聴者の興味が反映されているんです。マイナースポーツが盛り上がるためには、代表選手が国際大会で活躍するなどのきっかけがないと難しいのかなと思いますね。
そうだよね。結果が伴わないと、いろいろなメディアでも取り上げづらいよね。そんな中でも、マイナースポーツでがんばっている女子アスリートが、取材の対象として興味を持たれる要素とかはあるのかしら?
スポーツニュースに登場するには、視聴者の関心を引きつけることが必須です。

つい先日、企画提案から取材までを行なった際に、テコンドーの日本代表チームを取り上げました。東京大学のスポーツ先端科学と提携して、コードレスの動作解析スーツを着用して練習を行ない、型の角度などを数値で可視化したんです。このような新しい試みは、人の興味や関心を引きますよね。

最先端だったり、時代に合っていたり、人が惹きつけられるものとの掛け合わせが大事なんだね。
マイナーなスポーツほど、組織が大きくない分フットワークも軽いと思うので、新しい要素を取り入れ、変化を受け入れる柔軟性も高く保てるのではないかと思います。
マイナースポーツ業界の新しい試みについては、スポンサーや企業との取り組みにも期待ができそうだね。
選手たちが自分で解決するために行なう努力も大事ですが、他の人の力を借りることができたら、ゴールが近づく場合があるのではないかと思います。
最後に、水原さんのように真摯にスポーツに向き合ってきた女子が、競技の第一線から離れて、働きながらもう一回輝くためのアドバイスをもらえますか?
スポーツをしていたという経験は、消えることはありません。それは武器として自分の中に残り続けるし、資産としてこの先の人生でいかようにも利用することができるはず。スポーツという軸の中からアイデアを広げていくと、遠いと思っていた世界が意外と近く見えることがあるかもしれない。その経験値を生かしたまま、新しい世界に挑戦してほしいです。

 

■プロフィール

水原 恵理(みずはら えり) 

大阪府出身。成城大学ラグビー部監督だった父の影響で、ラグビーの英才教育を受けて育つ。学生時代に打ち込んだグランドホッケーでは、高校時代にインターハイ出場、大学時代にはインカレ出場経験を持つ。社会人になってからラグビーに競技転向。アナウンサーとして活躍する現在の趣味はゴルフであるなど、自他共に認める「スポーツ好き」として知られる。

水原恵理さんが出演する、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」
番組公式サイト:https://www.bs-tvtokyo.co.jp/plus10_sat/

Instagram:@erimizuhara

 

しげるちゃん

商品プロデューサー/インタビュアーとして活躍。芸能人やタレント、モデル、スポーツ選手など、様々な業界の著名人との交流が深く、自身がプロデュースするアイテムは、そんな多くの著名人が愛用することで知られ、メディアやSNSでも話題に上がる。また、CS局の旅番組にも多数出演、海外のファッション・流行などをナビゲートしている。

Instagram:@shigeru39

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