トラック競技日本代表・中村妃智にスポンサーが惚れ込む理由


「わたしがこれだけ練習に打ち込めるのは、スポンサーのおかげが大きいです。」

そう語る東京五輪・トラック女子マディソン日本代表の中村妃智選手は、オリンピック代表選手という肩書きを持ちながら、日本写真判定株式会社の社員でもある社会人アスリートです。

2016年の入社後、練習拠点も兼ねた千葉事業所の競輪場で働いていたという中村選手と、スポンサー先・所属先である日本写真判定のご担当者(吉川さん)に、アスリート×スポンサーの関係についてお話を伺いました。

 (取材・文 横畠花歩)

 

社会人としての成長と、アスリートとしての成長と。

 

―社会人アスリートの中村選手×スポンサーである日本写真判定株式会社のご担当者様、今日はよろしくお願いします!早速ですが、どのようにスポンサー契約に至ったんでしょうか。

中村:JOC(日本オリンピック協会)が実施している、企業とアスリートを繋げるシステムに登録したことがきっかけです。大学卒業後の2016年に契約・入社をして、それから4年間を社会人アスリートとして過ごしています。

―日本写真判定株式会社は何をされている会社ですか?

吉川:競輪場の運営・ゴール着順判定のための写真撮影・自転車競技のライブ配信などのメディア発信などなど、自転車に関することを幅広く行なっている会社です。サイクリングイベントなども企画・運営しています。

―スポンサーであり勤務先でもあるとのことですが、会社側としては中村選手を、いちアスリートとして認識をしているのか、いち社員として認識しているのか、どちらでしょうか?

吉川:これは完全に後者ですね。彼女はうちの社員で、我々自身はスポンサーという立ち位置でもありつつ、一緒に働く仲間という意識が強いです。同じ会社の仲間だからこそ、応援するのは当然!会社一丸となってのバックアップ体制です。

―現在の配属先の部署と、仕事内容を教えてください。

中村:総務部付け・・・ですよね?

中村選手マネージャー:ちょっと!(笑)総務部です、総務部!現在彼女には、競技に専念してもらうために社を離れ、単身伊豆に渡ってもらっているので、仕事はトレーニングということになりますね。

中村:本当にありがたい環境だなと思います。

―一昨年、伊豆に拠点を移される前は、事業所がある千葉で働かれていたんですよね?

吉川:入社後は千葉事業所でもある、千葉競輪場に配属しました。当時、トレーニングを兼ねて千葉と浦安を自転車で往復してたよね・・・。

 

中村:してましたね!午前中は競輪場でのサービス業務の接客をして、午後はトレーニングの時間に充てていました。競輪場という環境だったので、バンク(トラック)の走行練習やウェイトトレーニングをメインに行なっていました。

吉川:会社や現場としては、当初は競技に専念してもらうことも考えましたが、いち社会人として働いてもらう=社会人としてのスキルや姿勢を身に付けてもらうことも成長には必要と考えました。伊豆に送り出したことで、みんな寂しがってます。

 

スポンサーが惚れ込んだ、アスリート・中村妃智の魅力とは

 

―では、スポンサー様から見た、中村選手の魅力を教えてください。

吉川:まずは競技に向き合う真摯な姿です。自転車の競技中は堂々たるプロの姿ですが、自転車を降りれば飾らないキャラクターが現れて、男女問わず社内ファンが多いです。気遣いができたり、謙虚だったり。

中村:褒めすぎです、恥ずかしくてたまりません。わたし自身、社のみんなからの応援は励みですね。オリンピック出場が決定した後、全国の事業所の社員から寄せ書きが届いたときは背筋がピンっと伸びました。温かい人が多く、みんなの期待に応えたいなと強く思います。

―今まで中村選手が携わってきた、社での取り組み・ご活動内容について教えてください。

中村:印象深いのは、千葉サイクルクラブでの活動です。バンク(トラック)の一般開放活動では、運営スタッフ兼指導員として、初心者も含めてたくさんの方にサイクルスポーツの魅力を伝える機会をいただきました。最初の参加人数は7人からスタートして、最後には100人近くの人に参加してもらえました。

吉川:地元自治体のサイクルスポーツや、交通安全普及活動にも参加して、地域貢献という面でも活躍してくれています。出身地の千葉県・浦安市では様々なイベントにも参加して、市民の皆さんにも愛されている選手です。

―中村選手ご自身は、千葉サイクルクラブの活動で、参加者が増えた理由をどのように分析されていますか?

中村:最初はSNSを利用して参加の呼びかけをしました。千葉サイクルクラブには、初心者の人から上級者の人までが所属しています。参加者とのコミュニケーションを通して、自由に楽しく自転車に乗ってもらうことを心がけました。幼い子供が来ても、例えばおじいちゃんが来ても、みんな平等に楽しめる乗り物こそが自転車だと、わたしは思ってるので。

 

 

―社として、中村選手に期待されることは何ですか?

吉川:アスリートとしての中村選手には、悔いの無いように自分の納得のいく戦いをして欲しいと思っています。社員としての中村さんには、先のお話になるかもしれませんが、現在千葉に建設中の新しい施設でもサイクルクラブアカデミー事業に携わって欲しいと思っています。浦安市では、今後中村選手をメインにしたクリテリウム(レース)大会実施も予定されています。

―多方面からの愛がすごい・・・。

 


浦安市でのパレードの様子

 

「自転車競技を、メジャー競技に。」アスリートとスポンサーが、二人三脚で目指す目標とは

 

―率直なご意見をお伺いしたいのですが、中村選手のスポンサーをして得られる、御社のメリットはなんですか?

吉川:ストレートなご質問ですね!弊社は「サイクルスポーツを日本の文化にしたい」という目標を掲げています。その点、自転車競技で頑張っている選手を応援することは、互いにとっての相乗効果を見込んでのこと。中村選手に期待するのは、社内にいる他のアスリート社員のロールモデルとなってもらうことです。

―中村選手の他にも、アスリートを社員としてスポンサードされてるんですか?

中村:社員として働いているアスリート・・・アマチュア選手も含めると、10人ぐらいいますよね?わたしはトラック競技ですが、トラック競技に限らずパラトライアスロンの社員や、マウンテンバイクやBMX(東京五輪の新種目)の選手も所属しています。

―中村選手みたいに一気にスターダムに駆け上がる選手も出るかもしれないですね。

吉川:単純に、自転車競技の魅力を伝える・裾野を広げるということは難しい、と現場では感じていて。メッセンジャー的な役割ができる選手と契約を結ばせてもらっています。中村さんには、弊社のアスリート社員の中でも、トップランナーでいて欲しいと思っています。

―最後に、中村選手と日本写真判定株式会社とのスポンサー関係にある強みはなんですか?

中村:「自転車競技を、メジャー競技に」というお互いの合言葉をシェアして、同じ方向を見据えていることでしょうか。競技に専念できている現在の環境は、弊社でないと実現し得なかったと思っています。わたしにとってはスポンサー(応援者)というより、背中を預けて戦うことができるパートナーのような関係。期待に応えたい一心でここまでやってきたので、このタッグでこれからも自転車業界に貢献していきたいです。

吉川:会社として力を入れている競技への認知・普及強化、環境改善を現場の最前線で担ってくれる中村選手は、弊社としても大事なパートナーです。スタッフにもいい影響を与えてくれる彼女の存在は、会社としても頼りにしている部分が大きいですね。オリンピックが終わったら、社員総出で千葉の新競技施設で帰りを出迎えたいと思います。

―中村選手と日本写真判定(株)は、競技者と応援者という概念にとらわれない、パートナー関係の新しい形を実現されているように思えます。

中村:私たちの築いてきた信頼関係が、未来を担う将来のアスリートと、それを支える企業にとっての一つのロールモデルとなれば良いなと思います。自転車業界のこれから、をこの最強タッグで盛り上げていきたいですね。

 

プロフィール

日本写真判定㈱ 常務取締役 総務部部長

吉川智之(よしかわともゆき)

 


中村妃智(なかむら きさと)

千葉県浦安市出身・平成5年生まれ。日本写真判定所属。自転車競技・トラック(マディソン)種目日本代表。平成30年アジア選手権で、女子マディソン(30km)と、4人編成の女子チームパシュート(団体追い抜き)で金メダルを獲得。2019年全日本選手権では女子マディソン(20km)で優勝。

Instagram:@kisatonakamura
Twitter:@kisatonakamu

写真提供:Kensaku SAKAI/FABtroni+camera

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