「子どもほしいしバイクも続けたい!」を諦めないでよかったこと(平野由香里/サイクリングインストラクター)

平野由香里さんの写真

屈託のない笑顔とノリのいい大阪弁で、周囲を巻き込むパワーにあふれたサイクリングインストラクターの平野由香里さん。

出産を機に、大好きな自転車を一時的にお休みしていましたが、現在は少しずつ活動を再開。普段からスポーツに親しむ女性であれば、妊娠・出産で動けなくなることにストレスを感じることもあるでしょう。ママになってもスポーツを楽しむにはどうすればいいのか。今回は、新米ママとして今まさに奮闘中の平野由香里さんに、自転車と子育てのバランスについてお伺いしました。

「結婚して、子どもが欲しい」素直な気持ちを優先

ー結婚を意識したのはいつですか?

平野さん
30歳を過ぎた頃から、結婚したい気持ちが更に強まりました!正直、「結婚して子どもができたら、仕事が減ってしまうのでは」と、漠然とした不安がずっとあったのですが、「結婚して子どもがほしい」という気持ちが勝りました。自転車はおばあちゃんになっても乗れますが、出産はほしいタイミングで必ず授かれるものではないですので。

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ー旦那さんとの出会いのきっかけも自転車だとか?

彼は自転車の整備士をしていて、イタリアを拠点にプロの自転車チームで専属メカニックとして6年間修行していました。帰国したタイミングで、私が彼に自転車のメンテナンスを依頼したのがきっかけでした。

お付き合いしていく中で、将来の二人の人生計画を夢ノートに書いて、仕事や生活、結婚や子どものことを話し合いました。お互い別々に書いたその年表を照らし合わせると、彼は私の8歳年下なこと、海外遠征に行ってる期間も考えると「ああ、もう時間が足りない!」と気づき、付き合って3カ月後にはプロポーズしてくれました。

そしてその1年後に入籍しました。夢ノートに書いて確認したことで、結婚がスムーズに進んだのかなと思います。え?詰めたんじゃないですよ。ええ、確認です。あくまで彼の判断です(笑)

ーなんて建設的(笑)。彼と結婚してよかったなと思うことはありますか?

お互いに仕事への理解があることですね。イタリアでメカニックをしていた彼に「私の会社を一緒に経営をしませんか?」と提案したら、快く受け入れてくれたのも嬉しかったです。

彼の事業はスポーツバイク専門の洗車店*を開業間近です。1月8日からクラウドファンディングをスタートし、49分で目標金額を達成して、現在300%の達成まで来ています。

会社を盛り上げる仲間として、アイデアを出し合ったり、相談できるのが楽しいです。仕事でもプライベートでも、心強いパートナーができたと思います。

*自転車の洗車専門店【ラバッジョ】
https://lavaggio.jp/

 子育てママたちからの応援も大きな励みに

ー結婚前は、どんな活動をされていたのでしょうか?

平野さん

大きく分けると、フィットネスインストラクター、親子体操教室、国内外での自転車イベントの出演企画の3つです。

平日は、フィットネスジムでインドアバイクの講師がメインで、室内で音楽に合わせたバイクエクササイズを実施します。バイクエクササイズのプログラム開発を含め、インストラクターの育成や教育、認定試験も行っています。

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親子体操教室は、地元の市の運営施設で講師をしています。今年で9年目を迎え、いつの間にか保護者のパパ、ママが年下になってきました。

自転車イベントは地方出張もあります。週末はイベントを国内外で開催しています。例えば国内では、ロングライド*イベントで開会式のMCをして、そのまま自分も出走し、コースの休憩地点でご当地のグルメを味わいます。

食べるために走るって最高ですよ!海外のツアーは、準備こそ大変ですが、大好きな自転車で海外を走る体験は、何物にも代えがたいので今後も続けていきたいですね。地域を盛り上げるために市町村のサイクルイベントの企画アドバイザーも行っています。

*ロングライド・・・自転車での長距離走行を指す。一般的に、100km以上走るコースをロングライドと呼ぶことが多く、休憩や食事をとりながら走る。

ーご自身がママになったことで、周囲の反応に変化はありましたか?

最も変わったなと思うのが、SNSで子育て経験者の反応が増えたことです。

母親になっても活動を続けている私を見て、結婚後にスポーツを諦めた女性から「私も、もう少し頑張ってみようかなと思いました」とSNSでコメントをいただいたことがありました。子育てママたちから応援されるのって、本当に嬉しいんですよね。

独身時代は、男性のお客さんからはファンとか、先生として接せられることが多かったですね。子どもを産んで以降は、まるで娘を応援するかのように接してくれる方が増えた印象です。新しいステージに行けたような気がしています。先輩パパやママたちに教えるより、今は教えていただくほうが多いですね。

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―近年の国内外のツアーやイベント参加者にも、変化はありましたか?

変わりましたね。私が自転車を始めた10年前より明らかに女性が増えました。

サイクリストって、もともと女性が1割、男性が9割だったんです。でも、最近では夫婦で参加される方や女性1人で参加される方を見かけるようになりました。イベントによっては4割近くが女性の参加者がいらっしゃったりして驚いています。女性が注目する美への探求も健康的な美しさというのが広まってきたようにも思います。

運動して、食べて、笑って、ほぼ良く日焼けして、たっぷり眠ることができている女性は生き生きとしていますね!

妊娠と出産。変化するからだとの向き合い方

―妊娠中のストレスはありましたか?

平野さん

動けなくなってしまうことが最もつらいので、ストレス解消と体力づくりのために、マタニティスイミングに行きました。1日1kmを週に3回程度、出産直前まで通っていましたね。

日本の妊婦さんって、周囲から「とにかく安静にしてくださいね」と言われることが多いんです。でも、実際は安静にしすぎると体重は増えるし、体力が落ちてしまいますから、自分のペースで動くことは必要だなと思って続けていました。

これはあくまで個人の感覚なのですが、私はもともとの運動量が多かったからか、「妊娠後、急に運動を始めたら、からだに負担がかかった」ということは感じませんでしたね。個人差はあると思いますが、からだの様子を見ながら強度を調整するようにして、無理なく動いていました。 

ー出産後に「つらい」と感じたことはありますか?

「今まで走っていた距離が走れなくなってる」と実感したときは、すこしつらかったですね。160㎞も走れていた自分は、いったいどこへやら…。まずは体力を戻すことが当面の課題です。

復帰直後は40㎞から始めて、今は70km、80kmと少しずつ距離を増やして走るようにしています。自転車は、時間をかけてゆっくり走るロングライドも楽しいのですが、やはりスピードを競うレースにも出たいんです。

「ちゃんとまたタイムを獲りたい」っていう正直な気持ちがあるので、時間をかけて子育てと両立しながら、からだを戻せたらと思っています。ママになった現在も、第一戦に戻る気持ちでいっぱいです。

 

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1人の力では、自転車に乗れなかった

―出産後に苦労したことはありますか?

平野さん

産後1ヶ月の産褥期と言われる絶対安静期間が苦労しました。産後は、交通事故に遭ったレベルで絶対安静、自宅療養状態なんです。からだに負担をかけないように、家事も何かもお休みしなければいけなくて、これがとてもストレスでした。

その分、主人が家事をほぼワンオペ状態で担当してくれたのでありがたかったですね。私、里帰りをしなかったんです。ただ、仕事をしながら2人分の家事をこなすのは本当に大変そうで、申し訳ない気持ちにもなりました。

しかし、そのおかげで私も主人も子育てスキルを一緒に磨くことができて、私が仕事をするときも安心して子どもを主人に預けて出かけられます。うちの主人、遊ぶのもオムツ替えも沐浴の寝かしつけも、おっぱい以外は完璧です!男性もここまでできるんだなと尊敬してます。

-復帰した今、大変さを感じるのはどんなところでしょうか。

そうそう、産む前は「子どもを誰かに見てもらえれば、自転車に乗れる」と思っていたんですが、実際はそんなに単純ではありませんでした。特に苦労しているのが「搾乳」です。母乳で育てているのですが、子どもを両親や主人にみてもらっている時も、おっぱいって作られるんですね。絞らずに放っておくと乳腺炎になり、インフルエンザ並みの高熱が出ます。

出産して数か月後に、両親に子どもを預けて、軽めのロングライドイベントに出演したのですが、休憩タイムは必然的に搾乳タイムでした。心の中でこっそり乳搾りライドと名付けてました(笑)参加者の方が休憩している間に急いでお手洗いに駆け込んで搾乳して、終わったら走るの繰り返しです。

この期間は子どもと一緒にいなさい、とからだに言われているんだなと感じました。人間のからだはうまいことできていますね。結婚前に難なくできていた泊まりがけのイベントも一時的に頻度を減らしています。

―とはいえ、いい感じで現場復帰できている印象を受けますが…

私が現場に戻れているのは、本当に主人や両親、主人の両親の支えが大きいです。仕事の時に預かってもらうのはもちろんですが、他には「子育て中に、孤独を感じない」という点が、肉体的にも精神的にもかなり助かっています。

普段は親子3人で暮らしていても、主人が出張2~3日家を空けると、子どもと2人きりになります。家事と子育てをして、お出かけをしたとしても近所のスーパーぐらいであれば、誰とも話さず1日が終わります。1日目はまだいいんですけど、これを2日、3日と繰り返すと、今日が何曜日かわからなくなります。

同じことを繰り返す生活がストレスになるので、主人の不在時には、近くの実家に行きますね。話し相手になってくれて、子どもの面倒も見てくれるので気が休まります。

また、主人の両親が近くに住んでいるのも、現場復帰の大きな支えとなっています。主人のお母様も働きながら子育てしていたので、私の仕事を応援してくれます。先輩ママとして相談や助けをいただいています。主人と家族の支えがなかったら、絶対にこんなに早く自転車に乗れていなかったでしょうね。

完璧じゃなくていい。8割の力でチャレンジすることを目標に 

-正直、現役時代と比べると「アグレッシブに活動できていない」と思いますが、イヤだなと思うことはありますか? 

平野さん

イヤという感情はありませんね。子供を産むって、そういうことなのかなと。「これが人生だなぁ」という感じですね。 

もちろん、仕事が大好きなので早く元のように活動したいですが、2年くらいは子どもをしっかり見たいという気持ちが大きいです。 

私は元幼稚園の教諭なので、3歳からの子どもの成長は見慣れているのですが、0歳から2歳の子どもと触れ合うのは初めてで。赤ちゃんの成長を近くで見ることが、とても面白いんですよね。「どうしたら子育てと仕事のバランスをうまくとれるのか?」ということにも興味があります。いわゆる「ワークライフバランス」ですね。今は、焦らずにできることから始めています。

ー最後に、スポーツに限らず、結婚や出産で「やりたいことができなくなる」と思っている女性にアドバイスをお願いします!

「完璧にしすぎないこと」でしょうか。ママたちは、仕事も育児もしっかりやりたいという気持ちが強いと思うんです。私もそうでしたから。でも、張り詰めすぎてストレスになるくらいなら、完成度は100%じゃなくていいと思います。完璧にこなすよりも、「これはできそう」「これは難しい」「これならどうじゃ!」のトライ&エラーを繰り返して、「これならできる」を探して当てることが、大切かなと思います。 

また、出産前とまったく同じことはできないかもしれないけど、代わりに全く新しいことができるようになる気がしてます。根拠のない自信ですが!そう考えると「できない」というストレスは、意外に少ないと思いますよ。

 

 ■プロフィール

平野由香里さんの写真

平野 由香里(ひらの ゆかり)

サイクリングインストラクター

幼稚園教諭として勤務後、フィットネス業界へ転身。NESTA-PFTパーソナルトレーナー国際資格、RADICAL FITNESS TOP RIDE オフィシャルトレーナー等の資格を取得し、現在はインドアバイクインストラクターの他、フィットネスプログラムの開発・教育、親子体操教室の講師、自転車イベントのMC、自転車ツアーガイド、市町村の自転車イベントの企画アドバイザー等、幅広く活躍している。 

平野由香里 公式HP:http://www.yukari-cycling.com/

ホノルルセンチュリーライド:http://www.honolulucenturyride.jp/

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