レフリーでも、五輪へ。元ラグビー女子日本代表・桑井亜乃が挑戦し続ける理由

写真:本人提供

 

みなさんこんにちは。
元ラグビー女子日本代表(リオ五輪)、そして現在はラグビーレフリーの桑井亜乃です。

2021年に選手を引退した後、私はレフリーとして新たに挑戦することを決めました。思うようにいかない時もありますが、周りの方にも支えていただきながら、楽しく活動できています。

今回私のように挑戦する人を応援したいと思い、自分の経験についてコラムを書くことにしました。このコラムをきっかけに、新しいことへチャレンジしようと思っている方の背中を押すことができれば嬉しいです。

【プロフィール】
桑井亜乃(くわい・あの)
ラグビー元日本代表

大学までは陸上競技(円盤投げ)の選手として活躍し、大学卒業後ラグビーへ転向。
ラグビーを始めて1年後に日本代表へ選出、4年後にはリオオリンピック日本代表。2014年のアジア競技大会では、銀メダル・2018年には金メダルを獲得。2021年8月に引退を表明し、レフリーへの道を進む。イギリスを拠点におきながらオランダで行なわれたアムステルダム7s大会決勝でレフリーを務め、ポーランドで開催されたヨーロッパチャンピオンシップなどでもレフリーを務める。また選手・レフリーの経験を活かして解説でも活躍中。

Twitter:@ANO1020
Instagram:@ano.1020

 

引退、そしてレフリーへ。会社をやめて専念

2016年のリオオリンピックの時点で、東京五輪を目指そうと決意しました。
アスリートの4年間はとても長いものですが、そんな先の決断をした理由は「オリンピックという素晴らしい場所にまた戻ってきたい」と思ったからです。

目標達成に向けて鍛錬を重ねましたが、怪我に見舞われ、自分自身のパフォーマンスを上げることが出来ず出場は叶いませんでした。ずっと目指していた目標が目の前から消えたその時、もう一度次を目指す力は残っていませんでした。

そこで引退を決め、周りの方からレフリーになることを勧めていただきました。失礼ながら最初は興味がありませんでした。でも大好きなラグビーでまた世界を目指せるんだと思うと、レフリーへ挑戦をする覚悟が少しずつ自分の中で決まっていました。しかも、プレイヤーとレフリーの二つの立場でオリンピックに出場した前例はありません。やるしかない、と思いました。

 

レフリーになることに対して、選手時代のコーチや仲間からはすごく心配されました。

試合中のジャッジ次第で、観客やチームからネガティブな反応がでることもあります。そういったプレッシャーに耐えられるか、特にコーチからは本当にやりたいことなのか、ミーティングを行う度に聞かれていました。今思えば覚悟が決まっているのかを試されていたような気がします。心配してくれていました。その度に、覚悟が揺らがないか試されていたように感じました。

世界を目指すことは、甘くない。レフリーとしてオリンピックに出場するということは、「世界中のレフリーがライバルになる」ことでもあります。世界で10人しか選ばれない、その中でもレフリー(主審)として出場できるかわからないとても狭き門です。中途半端にやっていては、達成できない目標です。

レフリーは選手と同じくらいフィットネストレーニングもしますし、ウェイトトレーニングもします。週に1回マッサージを受けないと走れなくなるほどです。取り組み始めてレフリーもアスリートだと実感し、会社を辞めて、レフリーに専念することにしました。

そうして覚悟を決め行動を起こし、想いを周囲に伝えていると応援してくれる人が増えました。今は、大好きなラグビーに毎日全力で取り組めていることが楽しいと感じています。

写真:本人提供

 

海外留学を経て、成長を加速できた

いつかやりたかったことの一つが、留学でした。レフリーとしてのコミュニケーションには英語を使用するので、語学習得が必須になります。日本で習得するより現地に行った方が早いと思い、すぐに留学の決断をしました。

渡航後、言語の壁もあってすぐにチームに馴染めなかったり 円安により生活費の高騰、ロストバゲッジ(渡航時に荷物を紛失すること)を経験したりしましたが、人に恵まれました。最初は言語の壁があってチームに馴染めるか不安もありましたが、練習を共にしている間に、チームのみんなが色々と手助けをしてくれて、素敵なホストファミリーにも出会いました。

完璧な意思疎通はまだ難しいですが、一緒にプレーすることで普通に話すよりもコミュニケーションがとれるようになりました。私の中のラグビーは自己表現です。「スポーツって素敵だな」と改めて実感しました。

また、レフリーは試合後にレビュー(試合の振り返り)をコーチに提出します。コーチからのフィードバックを踏まえて次にどう活かすかを考えるのですが、留学したことで英語と日本語の両方でフィードバックをいただけています。

世界で活躍するためには海外の視点が必要になるので、とても勉強になります。大変なことも多かったですが、覚悟を持って海外に来たことで新たな繋がりを持てたことが、本当に良かったと思っています。

写真:本人提供

 

挑戦するから、充実する

私は、覚悟を決めたことで素敵な出会いや機会に恵まれました。

今もし新たな挑戦をすることに悩んでいる人がいたら、背中を押したいです。挑戦していると、生活が充実します。応援してくださっている方々への感謝の気持ちを忘れずに、私も「レフリーとして、オリンピック出場」という目標へ進んでいきたいと思います。私が挑戦する姿を見て、レフリーに興味を持ってくれる人が増えたり、挑戦する人が増えると嬉しいです。

また、オリンピアンとしてラグビーの魅力、今現在レフリーに挑戦していることをたくさんの人に伝えていけたらと思っています。解説や講演、イベント普及活動に参加することで、ラグビーの普及・自分自身の成長のためにもラグビーが繋いでくれた人・こと・ものを全て大切にしていきたいです。

最後まで読んでくださり、ありがとございました。

写真:本人提供

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