豊かな人生とは何か、私の価値観を変えたフランスという国(ラグビー・冨田真紀子)

写真:本人提供

フランスの1部リーグでラグビーをしている冨田真紀子です。ポーという南フランスを拠点に、Lons Section Paloise Rugby Fémininというチームに所属しています。

英語が話せればどうにかなるだろうと思っていたのですが、ここは、おフランス。

Bonjour!

英語は、あまり通じません。
英語を話そうとしてくれる人に出逢えたら奇跡みたいなもの。

そんな私が30歳の節目にフランスに単身で来てから感じたことや、フランスで肩の手術をうけたので、こちらの医療体制についても、書かせていただきます。

 

苦い記憶を塗り替えるために選んだ国、フランス

ここは南フランス、ポー。

人口は約7万人。横浜日産スタジアムに全員入るくらいのレベル。東京の大きさと比べたらとても小さく、ピレネー山脈に囲まれた、小さな田舎町。

日本人はめったにいませんが、ラグビー、バスケット、そしてハンドボールと、男子のプロチームがあるため、各国からスポーツ選手がたくさん集まっています。人がとても優しく、フランス語の話せない私も受け入れてくれるような懐の大きい人が多いと実感しています。シティにはZARAがあるため、私は田舎すぎずちょうどいいなと感じている温かい町です。

 

なぜフランスを選んだかと一言でいうと、

「ワールドカップでフランス代表と対戦したときに、レッドカードになったから」

 

あれは、2017年の女子ワールドカップ。
チカラの差を感じながらも、どうにか流れを変えたいと思い、思いっきりタックルへ行ったら、相手の顎に肩が当たってしまい、試合退場。3試合の出場停止。

試合の翌日にジュディシャルという処分の判断をうける懲罰会議があり、英語で謝り、なんでもう少し低くタックルに行けなかったんだろうと、自分を何度も責めました。
……思い返すと、すごく苦い思い出です。

フランスといえば、私にとって、レッドカードをもらった国。

そんな自分の記憶を上書きしたくて、フランスを選びました。

代表選手×フルタイム勤務を続ける理由

フランスではフランス代表に選ばれれば、協会とプロ契約させてもらえますが、1部リーグに所属している私のチームメイトの99%は、フルタイムで仕事をしています。

仕事を自分で見つけ、自分でスケジュールを管理し、夜19時から平日週3日トレーニングをし、週末は試合。チームはお金がないので、バスで10時間以上かけてアウェー戦に臨んだりすることも当たり前です。

 

それでもみんな、「好きだから」ラグビーしています。

その「好き」のレベルの価値観にびっくりさせられたことがありました。

普段は会計士として仕事している私たちのキャプテンは、現在34歳。フランス代表から声が掛かったりするけど、代表としてプレイすると、自分のいつものルーティーンができないから、代表への道は選ばなかったみたい。

 

試合の前日の夜にワインを飲んでから試合に臨みたいし、試合終わった後にお酒を飲む時間が好きだし、自分が大好きなタバコを止めるのはもってのほか。自分の好きなことに制限されるのなら、ラグビーしたくない、と言って、好きなことを両立しながらラグビーしています。

アスリートはお酒は控えようね、とか、たばこはNGだとか、それなりにあるべき姿があると思うんですけど、

あくまでも自分の人生を大切にしていて、自分の生活のバランスを崩さないようにラグビーするという選択肢に、私はかなり衝撃を受けました。そもそもタバコを吸っているチームメイトのことを許容するのに、少し時間がかかりました。

というのも、私は今まで、家族との時間や友達の結婚式、パートナーとの時間も全て後回しにしたり、食事制限も、すべて、ラグビーを優先していました。

 

アスリートとして高い目標を目指すために、我慢しなくてはいけないことはもちろんたくさんあります。でも、何かを犠牲にしながら、一つの目標に向かって努力することって、綺麗な夢物語に聞こえるけど、そんなきれいごとだけでは、もう生きていけないなと感じました。(これは老いなのか……??)

そう考えたときに、じゃあ私は何のために、ラグビーしてるの?ってずっと考えていましたが……

ただ「好きだから」だけでは、なんか腑に落ちなくって。

 

自分の人生を豊かにしたいから。

そう考えたときに、少し喉元がすっきりした感覚になりました。

写真:本人提供

ワールドカップだけに焦点を置かない決断

先日の試合で、病院で元に戻してもらわないといけないレベルの肩の脱臼をしました。すでに腱板断裂修復手術を2回行ったことのある同じ肩だったため、手術をしないと再受傷のリスクが高すぎると診断されました。しかし、手術=6ヶ月の離脱。リハビリを含めると、第一線に戻れるのは11月になるという計算です。

実は今年は、4年に1回の15人制ワールドカップイヤーの年。
開幕は10月。

手術をすれば、当然今年の選出機会は失われます。そりゃあ、もちろん出たいし、そのチャンスを自分から逃すのはもちろんしたくなかった。このタイミングでオペを決行するかどうか、本当に悩みました。

だけど、きっとこのまま手術せずに、100%ではない肩の状態で再受傷のリスクを背負いながら、ラグビーを続けることは、自分に無理をすることかもしれないなと。無理して自分に鞭を打ち続けることって、自分が思っているよりも、心も身体も疲れちゃうだろうな、って、ふと冷静に思いました。

 

ワールドカップだけに焦点をおかずに、自分の人生全体に焦点を置く。

ラグビーを続ける理由は、日本代表としてラグビーする以外にも、たくさんあっていいんじゃないかなって。フランスに来て、少しヒントを見つけた気がします。

 

いつか、私自身が自分の人生を、豊かだったなって、胸を張りたい。

そのためには、またワクワクした状態でラグビーできる身体を準備したい。

ましてや、フランスでオペするのも一つ経験だなと思い、オペをフランスですることに決めました。

全身麻酔だけど、当日入院の当日退院。
朝10時に病院行き、全身麻酔。
目が覚めたら、こんなご飯が出た。
そして部分麻酔効いたまま、当日16時に家に帰る。

翌日から家に看護師さんが2日に1回、チェックにきてくれる医療体制。

写真:本人提供

写真:本人提供

いろいろと驚くことばかりです。

実は、この私の気持ちを正直に言っていいのか、悩みました。
自分の決断が正しいかどうかもわからないし、もしかしたら何年後かに間違ってたって思うこともあるかもしれない。

この気持ちを言葉にしていても、タイトルとかがしっくりこないし、なんならラグビーの神様にこれで合ってるのか聞きたいくらい。

でも、このコラムを通して、いろんなラグビー選手がいるんだと思ってもらえたらいいなと思い、言葉にできるように時間をかけました。

私は、この決断を正解だと思って決めたし、この決断を正解にできるように、これからを一所懸命ラグビーと共に歩んでいきたい思っています。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
Merci beaucoup !

 

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