アスリートと考える食のGOOD HABIT。【出版記念対談】村田英理子さん×冨田真紀子さん

 

みなさんにとっての、体にいい“理想の食生活”はありますか?なるべく自然に、ストレスを感じるなく日常に取り入れるために必要なのは、頑張ることではなく、頑張らなくてもいい自分ルール=GOOD HABITを見つけること。

 

今回B&では、「アスリートと考えるGOOD HABIT」をテーマにした出版トークイベントを開催しました。2021年1月に『GOOD HABIT 心はずむ毎日の、うれしい食習慣』を出版したばかりの、アスリートフードマイスター1級の資格を持つ村田英理子さんが、現役ラグビー選手である冨田真紀子さんの食習慣の移り変わりを追った、おふたりの対談の様子をお届けします。

 

■ゲスト

冨田真紀子(とみたまきこ)

ラグビー選手。2016年7人制ラグビーリオデジャネイロ五輪、2017年15人制女子ラグビーW杯出場。高校時代から日本代表に選出され、早稲田大学卒業後はテレビ局に勤めながら、7人制と15人制ラグビーを兼任している。

2018年から山口県の「ながとブルーエンジェルズ」に加入し、フランスでの武者修行も経験したが、2020年に前十字靭帯断裂の大怪我を経験。現在はリハビリを続けながらフランスのチームへの入団準備中。

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村田英理子(むらた えりこ)

アスリートフードマイスター1級。ラグビー選手の夫を食事でサポートするなか、食事や栄養の情報を発信していたInstagramが人気を集める。無理なく続けやすい食習慣の考え方が共感を呼び、『GOOD HABIT 心はずむ毎日の、うれしい食習慣』(山川出版)を2021年1月に上梓。

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村田さんへのインタビュー記事はこちら

 

ストイックすぎる!冨田選手の食歴史

 

村田さん
今日はよろしくお願いします。冨田さんは昔から、食べることが好きだったそうですが、自炊は学生時代からされていたんですか?
冨田さん
高校1年生のときに1年間オーストラリアに留学したんですけど、ホームステイ先のホストマザーがご飯を作ってくれなくて。英語もままならないなかで初めてしっかりと包丁を握って、家族の分まで食事を用意してましたね。
村田さん
いきなり料理するって大変ですね・・・語学の問題もあると思うんですけど、手に入る食材も限られてたんじゃないですか?

 

冨田さん
「とりあえずカレーだ!」と思ってカレーをめちゃくちゃ作ってました(笑)人参と玉ねぎばかり食べてた気がします。

 

村田さん
その頃はスポーツされてました?

 

冨田さん
すでにラグビーに出会ったあとだったので、ラグビー強豪国であるオーストラリアを留学先に選んだんです。当時はラグビーは私にとって趣味の範囲だったので、まさか仕事になるとは思ってなかったです。

 

村田さん
ラグビーとの出会いが、留学にも影響したんですね。ちなみに、ラグビーを仕事にしたいと思ったのはいつですか?

 

冨田さん
大学2年生のときに、7人制のラグビーがオリンピック種目に登録されたんです。当時のわたしは15人制ラグビーでW杯出場を目指してたんですけど、「今から6年後のリオ五輪を目指します。その覚悟のない人は今この場を去ってください」ってアナウンスがあって(笑)わたしには逃げる勇気もなく、あれよあれよとオリンピックを目指すことになりました。

 

冨田真紀子さんとお村田英理子さんのB&での対談

セミナーはzoom形式で行われました。

 

村田さん
なるほど。だから15人制も7人制もできるんですね。

 

冨田さん
女子ラグビーは人口もまだまだ少ないので、7人制も15人制もやる人が多いです。もちろんどちらかに絞る選手もいますが、究極を言うと、わたしにとってラグビーはラグビーなので、両方楽しませてもらっています。両種目をプレイすることによって、活きることがたくさんありますね。

 

村田さん
15人制と7人制だと、体の作り方は変わるんですか?7人制に挑戦したことで、食事に対しての意識改革がはじまったきっかけはあるんですかね。

 

冨田さん
日本代表当時は、寮や合宿で提供されたものをただ食べるという感じでした。フィジカル不足を自覚していたので、増量期になると“当たり負け”しないよう身体の大きさを重要視してました。世界と戦うための体重や筋力を増やすために、今思えば暴飲暴食レベルの食生活を送っていました。

 

村田さん
どういったものを食べてたんですか?

 

冨田さん
鶏肉・ブロッコリー・卵の白身です!当時は、食べる量と吸収スピードがうまく連動せずに、毎日下痢をしていました。あまりの不調に胃カメラまで飲んで、過敏性腸症候群の診断を受けて・・・。必死に食べる生活を送ってたんです。

 

村田さん
偏った食生活は、増量期だったことが理由なんでしょうか。増量への目的意識が強すぎて、他のものを排除してしまったんですかね。

 

冨田さん
自分が大きくなるために、無駄な脂肪をつけたくなかったんです。『甘いものや、好きなものを食べる=負け』だと思ってました。謎に何かと戦っていたせいで当時は食事も楽しめなくて。例えば先輩と一緒に食事に行って、デザートを選ぶタイミングで「甘いものを食べるぐらいなら、パスタをもう一皿!」と。失礼な人間だったなと思います。自分で自分を許せず、人生楽しんでないなって思いました。

 

村田さん
誰かからの助言があってそういった食生活を送ってたんですか?それとも自ら?

 

冨田さん
当時の知識として、増量に最適なのは“鶏肉・白身・ブロッコリー”と口を揃えて言われてたんです。わたし自身の性格的に中途半端が嫌いで、言われたことも継続しないとためにならないと思っていたので、やめめられなくなってしまって。腸内環境もまったく落ち着かなかったです。

 

食への意識変化。現在の価値観へ

 

村田さん
冨田さんの食の歴史、凄まじいストイックさを感じます。成果として、体は理想の状態に近づいたんですか?

 

冨田さん
体重を増やす意識をして食べていたので、ただただ「重い」という感覚でプレイをしてました。体重に対する違和感のせいで怪我を負って、5回ぐらいオペをする結果となってしまいました。

 

村田さん
他にも挑戦してみた食習慣はありますか?

 

冨田さん
鶏・ブロッコリー・白身生活に懲りて、タンパク質源を鶏肉から魚に。ただ、魚に偏った食生活をしていたらラグビーに必要な“闘争心”が薄まってしまったような感覚を抱いて。タックルには闘争心や根性が必要なのに、魚ばかりを食べていた期間は穏やかな気持ちになってしまったように感じたんです(笑)

 

村田さん
おもしろい!まさかそんなところに影響があるとは!

 

冨田さん
本当にそれが理由なのかは不確かですが、他に思い当たるものがなかったんです。魚が原因なのかな?と疑って、試しに豚肉を摂ってみたら感覚が変わって闘争心が湧いてきて。試合の前日は魚だけじゃなく肉も必要だと学び、糖質もしっかり摂るように意識してます。

 

村田さん
そこからどんなふうに変化を遂げたんでしょう・・・今はいろんなものをバランスよく摂っていますか?

 

冨田さん
はい。今はタンパク質は豚ロース、鶏肉、魚が基本ですね。鶏もも肉の日・魚を買う日など、いろいろなものを食べる日が増えましたね。そのおかげで筋肉系の怪我がなくなりました。

 

村田さん
冨田さんの食遍歴は、①ストイック期 ②魚中心 ③バランスのよい食生活という順番で変化してきたんですね。

 

冨田選手のGOOD HABIT 

 

村田さん
ちなみに冨田さん、今の食習慣のGOOD HABITはありますか?

 

冨田さん
あります!3つ、順に追っていきますね。

 

①朝を大事にする

・毎朝の定番はオートミール。
・朝食にはフルーツを添える。冷凍ベリーなどは前夜に準備。
・起床後太陽光を浴び、余裕ある朝の時間を過ごす。

 

村田さん
オートミールはどのように食べてるんですか?

 

冨田さん
オートミールに無脂肪ヨーグルトを合わせ、ナッツ・バナナ・ベリー類・MTCオイル、チアシードなどどこでも手に入るものを入れています。どの世界に行っても継続できることを優先させた結果、朝はオートミールを食べることが多くなりました。

 

冨田真紀子さんの朝ごはんの例

冨田真紀子さんの朝の定番オートミール(写真はご本人提供)

 

②彩りを意識する

・バランスと同様、目で見ても楽しい食事を作る
・美味しいものを意識することで勝手に栄養が摂れる
・写真に収めたくなるような食事を意識

 

冨田さん
これは完全に母の教えです!

 

村田さん
彩りを意識、わたしも意識してます。色が濃く目に鮮やかな野菜の方がビタミンなどの含有量も多いので、栄養学的にも理にかなってるんです。野菜に含まれるビタミンが寄り添うことで、タンパク質の吸収効率も高まるので、肉や魚と同量の野菜も食べてほしいですね。この習慣はぜひ続けてください。

 

③捌きたい魚を食べる

・無になる時間を作る
・食べること=楽しい、を思い出す
・精神面でのコンディションを把握する

 

村田さん
魚を捌く・・・!今お住いの関東でも捌くんですか?

 

冨田さん
はい、近所のスーパーの鮮魚コーナーをチェックして、種類別に買う先を変えてます。好きが高じてシーフードソムリエや魚料理アドバイザーの資格も取りました。ストレス度数が三枚おろしの完成度に表れて、心の乱れがわかっちゃうんです。社会人の方にとっても、自分と向き合うための“無になる時間”が必要だと思うんですけど、たまたまわたしの場合はそれが魚だったんですよね。

魚好きが高じてお寿司屋さんで修行をしたことも。お店からプレゼントされた法被なのだそう。 (写真はご本人提供)

 

村田さん
冨田さんが、アスリートにおすすめしたい魚3選を教えてください。

 

冨田さん
う〜ん、イカですかね。タンパク質が豊富で、イカスミも栄養素がたっぷり凝縮されてます。イカの生態も面白いんですよ、泳ぎ方によってタンパク質が違ったり!(笑)2位はサバですね。栄養価を考えると、カルシウムや鉄分が丸ごと摂れるサバ缶をオススメします。同列2位はイワシで!

 

村田さん
魚の話になるとすごく生き生きしてる・・・(笑)

 

冨田さんがご自身でさばいた鯛(写真はご本人提供)

 

GOOD HABITが、自分の背中を押す

 

村田さん
わたしはGOOD HABITを継続することで、体質が改善され思考が前向きになり、平穏でいられるようになったという実感があるんですけど。冨田さんにとって、GOOD HABITが与えた影響は何ですか?

 

冨田さん
ポジティブな影響は2つあります。1つ目は、ストレスのもとだった、超不定期に訪れる生理が安定してきたことです。怪我をしてオペを受けるために一時的にピルをやめる必要があったんですが、術後に”このまま飲まずにいたらどうかな?”と試験的に飲むのをやめてみたところ、定期的な生理周期に戻ったんです。ピルもいいけど、自分で自分の身体を整えているということを実感できました。

2つ目は競技にも必要な“自信”がついたことです。食習慣も、競技と向き合う上で重要な項目だということに気づき、食習慣を整える=練習に挑む姿勢や環境が整うと自覚し、自分で自分の背中を押してあげられるようになりました。

 

村田さん
食事で自分の背中を押す・・・その言葉を、アスリートから聞けるのは嬉しいです!

 

冨田さん
わたしからも質問が・・・仕事をバリバリやりながら、旦那さんのために栄養の世界にのめりこめた理由ってなんですか?

 

村田さん
大人になってから“学ぶ”機会が減るなか、学ぶこと自体が面白かったんですよね。自分の意思で選択をして、挑戦を決意したその意欲と情報がフィットした感じですね。自分も食べることが大好きだから、栄養素の知識を得ることで、食卓での楽しみが増えるのって単純に面白いんです。資格取得が目的というより、資格を取るプロセスのなかで次の目標がどんどん見つかって、一生切っても切り離せない“食”と生活を掛け算した結果が今に繋がっています。

 

冨田さん
その勇気はすごいです!好きを仕事にすることって素敵だな、なかなかできない選択だなって思います。

 

村田さん
ちなみにGOOD HABITは食事だけに限らず、睡眠だったりエシカルな買い物などの行動に反映されることもありますが、冨田さんにとって好きな習慣はなんですか?

 

冨田さん
わたしは今まで殺伐と生きてきたので(笑)、時間と空間を大切に“丁寧な暮らしをする”ことを意識してます。食生活を整えるために調理器具を揃えたり、エプロンも職人ぽいものを買ったり。魚を捌くために、いい包丁とまな板を買いました。前はフライパンごと食卓に運んだり、鍋ごとパスタを食べたりしてたんです・・・。栄養摂取という点では同じでも、“丁寧な暮らし”を意識しただけで、「身になっている」と思えます。

 

村田さん
語弊がある言い方だけど、“アスリートも女子なんだな”と、いい意味で親近感が沸きます。可愛らしい一面が垣間見えた・・・!

 

冨田さん
女性アスリートは寿命が短いと思うんですけど、基本的にストイックなわたしたちには、継続可能な食習慣が本当に大切で。選手の寿命にも影響を及ぼすのかなと感じるようになりました。昔は理解できなかった“甘いもの”に対する意識に関しても、今はモンブランが大好きだし(笑)甘いものを食べたら、“次の日に走ろう”とか、意識的にコントロールをするようになりました。

 

村田さん
ストイックを追求すると身体が持たないということを、実際に体験されたんですね。食事を整えることで、寿命がある意味伸びるかもしれないということは、メッセージ性が強いと思います。

 

冨田さん
好きなスポーツだからこそ、長くやりたいですよね。マイナースポーツをメジャーにしていくには、続けることも大切。生活を整えるという意味で食習慣を継続することが、競技と長く付き合う秘訣なのかなと思いました。子供を産むかもしれない将来に備え、アスリートとしての未来への選択肢を広げ、自分にとって身近な人や物も大切にできるんじゃないかなと思います。

 

質疑応答


Q.食べ物に対してストイックだった時期に、食習慣を見直したきっかけはなんだったんですか?

冨田さん
身近な人たちのライフステージが変化していくなか、わたしだけ大学時代から変化のない食生活を送っていたことに対して、“これでいいのかな?”と振り返ったことがあるんです。究極を求めすぎて、自分で自分を愛せてなかった自覚もあったし、“こんなに努力しているのに”と、うまくいかないことに目がいきました。それに気づかせてくれたのは、周囲の人たちです。いろんな人の食習慣を参考にして“継続すること”に意識を向け、今ではモンブランを食べられるようになったり、シーズンの最中に糖質摂取のためのうどんも食べれるようになりました。選択肢があるって幸せだなあと感じてます。

 

村田さん
精神的なゆとりがあることで、パフォーマンスにはどんな影響がありますか?心身の一致具合はどうでしょう。

 

冨田さん
オペをしてから1年が経つんですが、今までの怪我明けでは重かったはずの身体が、勝手に動くという感覚の方が強いです。結果がついてきている感じがしますね。心に余裕がある今、食事の時間を通して家族との心の交流が生まれたり、わたしにとって食習慣の見直しは必要なことだったんだなと思います。

 

 

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