「私の声で流れを変える」日立Astemoリヴァーレ・長内美和子が描く理想のキャプテン像

V1リーグ・日立Astemoリヴァーレでキャプテンを務める長内美和子(おさない・みわこ)選手。2023年10月に開催された第19回アジア競技大会では日本代表の準優勝に貢献するなど、チーム内外での活躍が光ります。

そんな長内選手、過去には重い病気や怪我を経験するなど苦しい時期を過ごされました。ですがそれらの困難を乗り越え、高校卒業後は現在所属する日立Astemoリヴァーレに入部、昨シーズンからキャプテンに就任しています。

プロ8年目を迎えた長内選手に、これまで歩んできたバレーボール人生を始め、怪我を通じて気づいたセルフケアの重要性、理想のキャプテン像についてお話を伺いました。

幼少期の「楽しいバレー」が競技継続の原動力

ーバレーボールを始めたきっかけを教えてください。

もともと兄がバレーをやっていたので、家族で練習を見に行ったり大会の応援に行ったりする機会があったんです。それを見て、私もやってみたいなと思ってバレーを始めました。

ー実際にやってみていかがでしたか?

すごく楽しかったです。それこそ小学生の頃は、バレーに対して「楽しい」という感情しかありませんでした。上手くできないことすら楽しいみたいな。高学年になるまではボール遊びがメインでしたし、所属していたクラブチームのコーチも、私たちがバレーを楽しめるように指導をしていたそうです。今こうやってバレーを続けられているのは、幼少期の「バレーは楽しい」という原体験も大きいと思います。

ー競技に対する「楽しい」という感情は大事ですよね。その後はいかがでしたか?

高校時代は病気や怪我もあり、辛いことも多い時期を過ごしました。ただ、当時やっていたミドルブロッカーの経験が、現在アウトサイドヒッターとしてプレーするうえで非常に役立っているんです。あの頃があったからこそ、今の私があるとも思えるので、振り返れば辛かった高校時代も良い思い出です。もちろん当時は大変でしたが(笑)

ー差し支えなければ、高校時代の話もお聞かせいただけますか?

高校3年生の春頃、ある病気に罹患したんです。免疫力を下げる薬を飲んでいたため、一時期は外出もできないような生活を送っていました。そこから無事に回復して、7月には復帰。すぐに大会予選に出場し、その後もインターハイに向けた合宿に参加するなど、復帰直後から忙しい日々が始まりました。

多忙ではありつつも順調に過ごしていたなか、インターハイ初戦で足底筋膜炎を発症したんです。試合が終わってからも足をつくことができず、歩くのも辛いような状態に…。大会期間中は、鍼治療を受けながら試合に臨んでいました。たまたまその治療が自分に合っていたので試合には出続けられましたが、その先生がいなければプレーすることも難しかったと思います。

ー素晴らしい先生に出会えて良かったです。怪我はなにか原因があったのでしょうか?

怪我の原因は、足の裏のケアが不十分だったことです。復帰後、遅れを取り戻そうと無理をしてしまい、それが怪我に繋がりました。当時は練習前のアップも簡単に済ませていましたし、練習後もあまりストレッチをせずに帰るような生活。振り返ると、怪我をするのも納得です。まだ高校生だったこともあり、ケアに対する意識が高くはありませんでしたね。

ー高校時代はケアの重要性に気づきにくいものですよね。プロになったことで身体との向き合い方は変わりましたか?

それは変わりました。実は春高バレーの前にも怪我をしていて、捻挫を抱えたまま日立Astemoリヴァーレに入ったんです。そんな状態だったので、入部後はリハビリやテーピングを基礎から学び直し、先輩たちのケアの仕方を見て学ぶ日々。徐々に身体の構造も理解できるようになり、ここをほぐすとこの症状が改善するといったことも分かるようになりました。私は身体が硬くなりやすいタイプなので、ほぐすことも大切にしていますが、ほぐしすぎないようにすることも意識しています。

ー身体のケアに関して、参考にしている選手はいますか?

同じチームの渡邊彩選手ですね。いつも練習の1時間前には体育館に来て準備を始め、終了後も身体のケアに30分は費やしています。そのルーティン自体も素晴らしいのですが、よく見ると自分の状態に合わせてケアの内容が違うのですごいなと。彩さんからは、本当に良い影響を受けています。

U23日本代表を経て、自分と向き合えるように

ープロになられて環境も大きく変わったと思います。ご自身の中でなにか変化はありましたか?

バレーに費やす時間が増えたことで、競技に対する考え方が変わったと思います。特にU23日本代表に選ばれてからは、将来の自分のキャリアについてより真剣に考えるようになりました。

ーU23日本代表ではどのような収穫があったのでしょうか?

監督が選手の主体性を尊重する方で「なにかを根本的に変えるには自分の意思が必要不可欠」という話をされていて、その考え方に刺激を受けました。もし高校時代から様々なことに対して主体的に取り組んでいたら、もっと変わっていたのかな?とかは思っちゃいますけどね。今考えると学生の頃は、あまり深く考えずにバレーをやっていました。

他にも、U23日本代表での経験を通じて、それまで以上に自分と向き合えるようになりました。最初は、代表に招集される優秀な選手と自分を比較して落胆していたのですが、自分がその先輩方と同じ年齢になったときに実力が上回っていたらいいかと、考え方を改めたんです。他人と比べるのではなく、今の自分に足りないものはなにかを考えようと。自分と向き合えるようになったのは大きな収穫でしたね。

ーバレーに対する考え方にも変化はありましたか?

高校の頃は、プロのバレーボール選手になりたいという大きな夢がありましたが、それが叶ってからは次の目標について考えるようになりました。私は何のためにバレーをやっているのか、この先どうなりたいのかって、改めて自分にとってバレーとは?と、考えていたんです。そのタイミングでU23日本代表に選んでいただいて、シニアも目指せるかもしれないという実感が湧きました。ステップアップするにつれ、バレーをする目的や目標は変化していったと思います。

ー今はどういった目的のためにバレーをされていますか?

日立Astemoリヴァーレというチームの象徴となる選手になれたらいいなと。そのためにはプレー面だけでなくより高い人間性も求められるので、チームの顔として認められるようにあらゆる面で精進していきたいです。

理想のキャプテンを目指し、真のエースへ

ーキャプテン2年目のシーズンはどのように過ごしていきたいですか?

やるべきことは昨シーズンと変わりません。自分のプレーに集中したうえで、選手とのコミュニケーションを大切にする。もちろん選手の移籍や監督の退任といった変化は受け入れつつ、自分が目指すキャプテン像に少しでも近づけるように全力を尽くしたいです。

ー長内選手が目指すキャプテン像について教えてください。

全員が同じ目標に向かえるように、自らのプレーでチームを引っ張れる人ですね。日頃から選手たちの声にしっかりと耳を傾け、その意見を踏まえたうえで適切な方向へ導ければなと。

元々は、他の選手と積極的にコミュニケーションを取るタイプではありませんでしたが、昨シーズンからキャプテンに就任したことで多くの方々と関わる機会に恵まれました。今は、チームの精神的な支柱になることを目指しています。自分自身、一見ネガティブに思えることをポジティブに変換することで色々な壁を乗り越えてきたので、もしなにか困ったり悩んでいる選手がいれば、まずは話を聞くところから始めたいです。

ーキャプテンを務める中で課題に感じていることはありますか?

自分のパフォーマンスが落ちている時にチームをどう引っ張るべきかは、まだ正解が分かっていません。結果が出ない中でも自分の役割をきちんと果たしつつ、チームにも目を向けることが重要だとは思いますが、なかなか簡単なことではないので、こればかりは今も課題です。

ーチームとしてキャプテンとして、どういうバレーを見せていきたいですか?

私たちのチームには点数を爆発的に取れるサイドの選手がいないため、いつも全員バレーの総力戦です。少しでも連携が乱れると上手く波に乗れないこともありますが、そんな時は、私が声をかけてチームの空気や試合の流れを良い方向に変えていくので、全員で繋いで攻撃をする日立Astemoリヴァーレらしいバレーをぜひ見て欲しいです。

ー声かけをする時に意識していることはありますか?

チームの状態を観察したうえで、的確なアドバイスをするよう心がけています。粗いプレーや精神的な焦りが出ているプレー、周りを思いやれていないプレーなどに対して指摘はしますが、ポジティブになれるような声かけを意識しています。

ー最後に、今後の目標を教えてください。

キャプテンとしては、プレー面と精神面の両方でチームを支えていきたいです。個人としては、重要な場面で点を取れるような絶対的なエースになれたらなと。この目標に関してはここ2年ほど取り組んでいる課題でもあるので、引き続き逃げずに前向きに取り組み、真のエースを目指したいです。

RELATED

PICK UP

NEW