生理痛でも海に。指導者と選手のオープンな対話を【プロサーファー須田那月】

写真:本人提供

プロサーファーの須田那月さんは、選手としても海外を転戦する傍ら、NPO法人サーフアンドシーの理事として、海の環境保全やサーファーの競技環境の向上を目指す活動にも精力的に取り組んでいます。そんな那月さんが「今、声を大にして伝えたいこと」は、生理への理解を選手とその家族で高めていくことの大切さ。重い生理痛に苦しんできた那月さんが抱えてきた悩みを伺いました。

 

月経困難症

女子アスリートとして一番悩みを抱えてきたことは、生理との向き合い方でした。昔からひどい生理痛に悩まされ、嘔吐と下痢に苦しむことも。「こんなに辛いことってあるの?」と周りに内緒で地元の産婦人科に通い始めました。そこで初めて「月経困難症」という言葉を知ったんです。

写真:本人提供

ピルを処方してもらうことも考えたのですが、私の地元の種子島には産婦人科が多くあるわけではなく、手に入る種類も限られます。どうしたらいいのだろう、とネットで検索をする日々。もっと情報がオープンにあったらいいのに、と思い続けてきました。

 

 

情報の多さが、選手生命を左右する

そんなとき元競泳選手の伊藤華英さんが、女性アスリートと生理の問題について発信をしているのを知りました。それを見て、なんだかすごくほっとしたような気持ちになったんですよね。「生理のことをオープンに話していいんだ」って。それまでは、SNSに書くのも躊躇してしまっていたんです。でも、同じように悩んでいる選手のためにも、むしろオープンにすべきだと考えるようになりました。

たとえば、女性アスリート外来を持つ産婦人科があるということも、私は華英さんの発信があったから知ることができました。アスリートならではの悩みに寄り添ってもらうことができますし、ピルの種類も豊富。競技環境や、ピルの副作用の出方に応じて自分に合うピルを処方してもらえるようで、私も受診予定です。

写真:本人提供

コロナ禍のサーフィン界は、大会数が少なくなり、重要な試合しか開催されない状態が続いています。数少ない大会に生理が被ってしまったらどうしよう、という不安を毎回抱えています。実際、試合の前日の生理痛がひどく、練習ができなかったこともありました。自分のコンディションを保つための情報をいかに多く収集できるかが、選手生命を左右します。

 

指導者と選手の対話が必要

選手自身が、生理や自分の体についての知識を持つことはもちろん大切ですが、同時に指導者や親の理解が進むことで、選手を守ることにつながると思います。たとえば、今でこそアスリートがピルを使うことが徐々に一般的になってきていますが、「薬に頼るな」と言われてしまうこともあると聞きます。また、生理を理由に練習を休んだり、時間を短くしたりするといったことを怖がる選手も多いはず。指導者が知識を持っていれば、練習内容も気持ちの面でもケアができます。

今、サーフィン界には10代の若い選手が多く登場しています。私もそうだったからわかるのですが、そのくらいの年齢だとある程度気持ちで頑張れちゃうんですよね。親御さんに指導を受けている選手も多いのですが、少し体が辛くても親に「練習しろ」と言われればできてしまう。「若いうちは大丈夫」と思いがちですが、高校生くらいは女性ホルモンの周期は乱れやすいですし、体重も増える。成長期のメカニズムを知らずに「ダイエットしなきゃ」と考える選手も少なくありません。

写真:本人提供

私は父にサーフィンを習っていたのですが、生理について相談しにくさを感じていた時期も長かったんです。ただでさえ生理中は体もしんどいのに、我慢することでメンタルも辛くなっていく。そうした状態ではパフォーマンスを出すことが難しく、どんどん悪循環に陥ってしまう。今後は、選手とその親が生理について話すきっかけとなるような場を作っていけたらと考えています。

 

須田那月さんの応援はスポーツギフティングサービス「Unlim」にて!

RELATED

PICK UP

NEW