サポートがあるから、指導と育児を両立できる。元卓球日本代表・石垣優香

写真:ニッタクニュース提供

 

9歳から卓球を始め、18歳から日本代表として活躍された石垣優香さん。2018年に引退をして、2020年に出産しました。現在は、子育てをしながら日本トップクラスの中高生を指導しています。

スポーツ庁委託事業女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリート支援プログラム」の育児サポートを受けながら指導されているのは、卓球界で石垣さんが初めてとのこと。出産後にも引き続き指導者としての道を選んだ理由や、育児と仕事を両立するための秘訣を伺いました。

(インタビュー・文:競泳元日本代表 竹村幸)

 

写真:ニッタクニュース提供

石垣優香さん
愛知県名古屋出身の卓球元日本代表選手。中学生で才能を開花させ、世界卓球やITTFワールドブルガリアオープン優勝など功績を残し2018年に引退。2019年には日本生命レッドエルフのヘッドコーチ兼主将としてTリーグに参戦。2020年に第一子出産、その後は卓球ジュニアナショナルチーム・エリートアカデミー・ホープスナショナルチームのコーチとして活躍中。

引退、そして指導者の道へ

竹村
今日はよろしくお願いします。はじめに、現在の活動内容を教えてください。
石垣さん
去年日本生命を退職し、今はコーチとしてナショナルトレーニングセンター(NTC=日本初のトップレベル競技者用トレーニング施設)で働いています。
竹村
会社を辞めようと思ったきっかけは?
石垣さん
引退したら結婚しようと思っていたので、そのタイミングで退社を決めました。でもちょうどTリーグが始まったのと、若い選手層のチームだったので、依頼を受けて1年間は選手のサポートとして会社に残りました。最後の1年は卓球部の監督や会社の理解もありチームに残りながら色々なことに挑戦させていただきとても充実していました。
竹村
現役引退はどのように決めましたか?
石垣さん
今卓球界は若い世代がかなり強くなっています。その子たちに負けても悔しいと感じなくなったことが、一番の決め手ですね。勝てなくなってから引退するのではなく、良い時に辞めたいなと。世界選手権の代表から外れてからは、国内の団体戦に専念しチームに貢献することを目標に一年を過ごし引退しました。
竹村
引退後、指導者になることは決めていたんですか?
石垣さん
選手として出会ってきた指導者の方々から、卓球はもちろん、人としても大切なことをたくさん教わりました。その背中をみて、私も同じようになりたいと思い指導者の道に進みました。また自分の経験を活かして指導することが、卓球界への恩返しにも繋がるかなと。
竹村
私も水泳指導をしていますが、指導者として人に伝えることは難しいですよね。
石垣さん
そうなんです。自分でやる方が、簡単。自分がやってきたことを言語化することは難しいです。また人それぞれ感覚が違うので、伝え方も悩みます。選手とコミュニケーションをとりながら、試行錯誤していますね。一緒に働いている指導者の方からヒントや刺激をもらうことも多いです。

ですが、やりがいは感じています。選手が頑張っている姿や、取り組んでいることが形になって喜んでいる姿を見ると嬉しいです。同じ卓球なのに、新しいことに挑戦している感じがして楽しいですね。

スポーツ庁のサポートで、仕事と育児を両立

竹村
出産を経験して指導の面で変わったことはありますか?
石垣さん
私に選手を預けてくださっている親御さんの気持ちがわかるようになりました。より一層責任感が芽生えたんです。「私が導いてあげたい」という思いが強くなりましたね。
竹村
産後はどれぐらいで復帰されましたか?
石垣さん
3ヶ月後に復帰し、月に5〜6日程度働いていました。当時は大学のコーチだったので子供と出勤することもありましたが、今はNTCの託児サービスを利用しています。
竹村
託児サービスがあるんですね。どういったサービスですか?
石垣さん

スポーツ庁委託事業女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性アスリート支援プログラム」の育児サポートを利用しています。

卓球協会から申請をして許可がおりれば、仕事場にシッターさんがきてくださり預けることができます。県外にいく時も同行してくれますし、料金もサポートをしてくれているので本当に助かっています。指導者だけでなく、産後復帰を目指すママアスリートや女性特有の悩みをサポートする取り組みもあります。

大変な部分も多いですが、サポートのおかげで仕事に集中できています。子供のためにも頑張りたいし、指導中は夢中になれるので充実しています。仕事を終えた後の子供との時間は癒しの時間ですね。

私はサポートを利用したり理解をしてくださる方が周りにいることで、目標を持って指導を行なえています。もっとこういった環境が広がれば、女性が輝ける社会に近づくかなと感じています。

 

写真:本人提供

 

 

自分の許容範囲は越えない

竹村
育児に指導にと、疲れが溜まると思います。どのようにしてご自身のケアをされていますか?
石垣さん
疲れすぎないように自分の許容範囲を理解して、その一線は越えないように客観的に自分のことを見るように心がけています。疲れたと感じたら、子供と外食をしたりして息抜きをしています。手を抜く時はしっかり抜いていますね。あとは、選手が喜んでいる姿を見るとまた頑張ろうと思います。
竹村
気分が落ち込んだ時はどうされていますか?
石垣さん
友達と話すことで気分転換をしています。現役の時は、自分の中で納得のいく答えが出るまで悩むことも多かったですが、今は悩んでも仕方のないことは忘れるようにしています。悩み方は引退してから変わったと思います。
竹村
生活面でも精神面でもストイックな部分と手を抜く部分の判断が上手なんですね。
指導者として選手への声かけではどういうところを大事にされていますか?
石垣さん
選手の時に良いことも悪いこともたくさん経験してきたので、一人ひとりに寄り添えるような声かけができるよう心がけています。母になったことも指導者として大きく影響していると思います。
竹村
寄り添ってくれる指導者だと選手も安心して信頼できますね。では、石垣さんの今後の目標を教えてください。
石垣さん
選手が目標を達成できるようにお手伝いすること、卓球を通して人生が豊かになるようにサポートすることが目標です。また、子育てが終わった後に、新しい目標を作ることも目標です。「目標を持ち続けること」が目標ですね。
竹村
ありがとうございます。では最後に女子アスリートへメッセージをお願いします!
石垣さん
毎日が良いことばかりではありません。悪いことの方が多く感じるかもしれません。ですがその経験が後に自分の力になることを信じて進んで欲しいと思っています。1日1日を大事に過ごして、先に良い未来があると信じて一緒に頑張りましょう!

RELATED

PICK UP

NEW